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“映画の星座盤”第75回最終回!娯楽映画の極意“冒頭15分の三つの提示”

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★今回で連載75回。キリがいいので…。
 「映画の星座盤」は今回で連載75回を迎えました。年数に直すと6年とちょっと。書き始めた時はこんなに長い間、続くとは思ってはいませんでした。それもこれも読者の皆様のおかげです。ご愛読本当にありがとうございます。
 で、いきなりですが、『シネマ倶楽部』リニューアルにより、「映画の星座盤」は今回が最終回となりました。何事にも終わりがあるものでして…。
 最終回は、「面白い映画とつまらない映画は冒頭15分で決まる」と題して、ハリウッド娯楽映画の隠された作劇術について書いてみることにします。

★低予算映画の帝王の名言
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 ハリウッドの映画人にロジャー・コーマンという人がいます。この人は1950年代からずっと活動を続けており、「100本の映画を作り10セントも損しなかった」と豪語する伝説のプロデューサー兼監督です。彼は多くの映画人にキャリアのスタートの機会を与えて来ました。どういう人がいるかっていうと、これがスゴイんです。『ゴッドファーザー』(1972年)のフランシス・フォード・コッポラ『ペーパームーン』(1973年)のピーター・ボグダノヴィッチ『タクシードライバー』(1976年)のマーティン・スコセッシ『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年)のロン・ハワード『羊たちの沈黙』(1991年)のジョナサン・デミ『アバター』(2009年)のジェームズ・キャメロン。どうです、アカデミー賞受賞者や大ヒットメーカーばかりでしょ。

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 で、この中の一人、マーティン・スコセッシが商業映画デビュー作をコーマンのプロデュースで作った時、コーマンからこう言われたそうです。

「映画の冒頭15分をとてもうまく撮ることだ。観客は何が始まるか知りたがっているからね。ここで観客を引き込まないと映画は失敗だ」

 15分と言えば、NHKの朝の連続TV小説の一話分、また一般的なTVドラマの最初のコマーシャル・タイムまでの時間です。そう考えると15分が如何に大切か判るでしょう?
 コーマンのプロデュースした映画は全て低予算で、正直言って「何だ、これは?」って驚くようなチープな映画が多いのですが、彼が言う「冒頭15分が勝負」という考えはハリウッド娯楽映画の極意なのです。

★派手な見せ場を冒頭15分に!
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 予算があろうがなかろうが、最初の15分に見せ場を用意するのが娯楽映画の鉄則の一つです。例えば『007』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズのような大作の場合は大掛かりな見せ場で、中&低予算のアクションやホラーの場合は銃撃戦やショック&ミステリアスな衝撃シーンで物語の幕が開きます。この時、観客の多くは最初がコレなんだから、クライマックスにはもっとスゴイものが観られるに違いないと期待します。当然、コーマンは先程の言葉の後に、こう言っています。

「クライマックスにも力を入れなくてはいけない。観客は、どんなふうにすべてがおさまるのか知りたがっているから」
 コーマンの言葉は真理です。しかもクライマックスにかける力は絶対に冒頭15分を超えなければなりません。それが出来なかったら観客の期待を裏切ることになってしまいます。実際、『007』シリーズにしろ、『インディ・ジョーンズ』シリーズにしろ、そんな失敗を犯して、面白くないと言われる作品はありますね。

★冒頭15分で描かなくてはならないもの
 一方で、冒頭15分に見せ場があるし、クライマックスにはそれ以上の見せ場も用意されているのに面白くないっていう映画もありますよね。そういう映画って大掛かりなアクションばかりに気を取られて、それよりももっと重要な“15分の三つの提示”を疎かにしているのです。その三つの提示とは、

①誰が主人公で、誰が仇役か
②主人公はどういうキャラクターなのか
③主人公の目的は何で、ジャンルは何


 これらは旅行ガイドのようなもの。①と②は同行者、③は行き先と乗り物の種類と考えてください。どこに行くか、何に乗るか判らない旅行ってしたくないでしょ? これが判れば、あとは安心して旅を楽しむことが出来るという訳です。

 例えばブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』(1988年)の場合、

①主人公は別居中の妻に会うためにL.A.にやってきたN.Y.の刑事マクレーン。仇役は武装テロリスト。
②マクレーンは妻に未練たっぷりの普通のおっさん。高所恐怖症。
③武装テロリストから妻を守り切るアクション。

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 このように三つの提示を冒頭の15分で描き切っています。試しにシリーズ最新作『ダイ・ハード ラスト・デイ』(2013年)と“15分の三つの提示”を意識しながら見比べてください。『ダイ・ハード』が何度観ても面白い理由が実感として判りますよ。

★それでも面白くない映画はある
 残念ながら“15分の三つの提示”がちゃんと行われているのに面白くない映画があります。理由は二つあります。
 
 一つは②に興味が持てない場合。ドラマや恋愛、コメディに起きがちです。これらのジャンルは主人公のキャラクターに反感や嫌悪を覚えた時点でアウトです。しかもその感情は個人差があり、作り手ではどうする事も出来ません。まさに人それぞれってヤツです。
 もうひとつは③に新味がない場合。これはアクション映画やホラー映画、サスペンス映画が起こりやすい問題です。「前も観たなぁ~、こういうの」って、アレです。

 さていかがだったでしょう。映画は冒頭15分で観客の興味を惹けるかどうかか鍵なのです。今後、映画を観る時は“冒頭15分の三つの提示”を少しでも意識して貰えたら嬉しいです。

それではまたいつか、どこかで。

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年9月号)
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2013/09/01(日) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第74回ファンタジー三連発「オズはじまりの戦い」「ヘンゼル&グレーテル」「ジャックと天空の巨人」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
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星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

今月の星座盤は、この夏注目のファンタジー系映画3作をご紹介しましょう。

★『オズ はじまりの戦い』。三大女優が魔性の美を競う?

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 1作目は『オズ はじまりの戦い』。監督は『スパイダーマン』三部作(2002、04、07年)のサム・ライミ。主演は『スパイダーマン』でスパイダーマン/ピーター・パーカーの親友を演じたジェームズ・フランコ
 どんな話かっていうと、ライアン・フランク・ボームが1900年に発表した児童文学『オズの魔法使い』の前日談。しがない手品師がいかにして魔法の国“オズ”の大魔法使いになったかってことが描かれます。

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 本作の下敷きになっているのは、ミュージカル・ファンタジーの傑作『オズの魔法使』(1939年)。って言うか、本作は『オズの魔法使 エピソード0』です。だから事前に『オズの魔法使』を観ていると面白さは倍増。ビジュアル・イメージなんか、ほぼオリジナルを踏襲していますから、「ああ、なるほど」ってことになります。

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 特に注目は『ブラック・スワン』(2010年)のミラ・クニスが演じる“西の魔女セオドラ”です。オリジナルを観ていない人は、このキャラの変貌に「???」。

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 そうそう、ミラ・クニスで思い出しましたけど、本作には彼女の他に魔女がふたり登場するんですけど、演じているのは『ボーン・レガシー』(2012年)のレイチェル・ワイズ『シャッター・アイランド』(2010年)のミシェル・ウィリアムズ。「まぁ、この三人なんだから、それはそれは美しい魔女なんでしょうね~、『スノーホワイト』(2012年)のシャーリーズ・セロンみたいに」と誰もが思うでしょうけど、悲しいことにサム・ライミって監督、女優を綺麗に撮るのが苦手なんですよ。と言うか彼の女優の好みは変わっているんです。

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 デビュー作『死霊のはらわた』(1981年)から一貫して、主演女優は頬骨が目立つ顔の女優さんなんです。『スパイダーマン』キルスティン・ダンストがそうだったでしょう。その頬骨フェチが行くとこまで行ったのが、リーアム・ニーソン主演の『ダークマン』(1990年)。この映画のヒロインを見たらびっくりしますよ。他にいくらでもキレイな女優がいるだろうにって誰もが思います。ちなみにこの女優、アマチュア時代からの仲間である有名監督の奥さんだったりします。

★『ヘンゼル&グレーテル』。その後のグリム童話は肉弾戦!

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 魔女のお菓子の家が有名なグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』。本作は魔女を倒し自由になったヘンゼルとグレーテル兄妹のその後を描いています。

 主演は『アベンジャーズ』(2012年)、『ボーン・レガシー』など今、戦闘プロフェッショナルを演じさせれば右に出る者なしのジェレミー・レナー『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(2010年)、『タイタンの戦い』(2010年)などファンタジー映画にやたらに出ているジェマ・アータートン

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 大人になったヘンゼルとグレーテルが何をしているかって言うと、魔女ハンター。“007”の秘密兵器ばりの七つ道具を駆使して、子供の時の恨みを晴らすかの如く、魔女を狩って、狩って、狩りまくります。

 と、こう書くとアニメっぽいスタイリッシュでクールな腕前が全編で見られるとお思いでしょうが、残念。実際のヘンゼルとグレーテルの魔女狩りは“殴る、蹴る、どつく”の肉弾戦。鼻血をしたたらせ、まるでプロレスのような戦いっぷりです。汗まみれ、泥まみれになる兄妹の姿はスポーツ・コメディの登場人物のようで、じわじわと笑えてきます。

 おまけに兄のヘンゼルは持病を抱えてるんですが、その病名は爆笑必至! ネタバレになるから書きませんけど、子供の頃、魔女に無理矢理、お菓子を食べさせられていたのですから、なんの病気かは大体、想像つくでしょ?

 実は本作は『俺たちフィギュアスケーター』(2007年)、『俺たちダンクシューター』(2008年)などの熱血スポーツ・コメディのスター、ウィル・フェレルの製作プロダクションの作品なんです。だから魔女との戦いがドタバタするのも当然。実際、ヘンゼルの女性関係はウィル・フェレル映画そのものなんです(フェレルの最新作『俺たちサボテン・アミーゴ!』(2012年)と一緒に観るのがオススメ)。観る時はコメディだと思ってご覧ください。
 そうそう、言い忘れてました。本作は史上最多の魔女が登場する映画でもあります。

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★『ジャックと天空の巨人』。これは『進撃の巨人』への挑戦状だ!

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 イングランドで古くから語り継がれてきた民話『ジャックと豆の木』。それを大胆に脚色して映画化したのが、本作。監督は『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)、『X-MEN』(2000年)のブライアン・シンガー、脚本は『ユージュアル・サスペクツ』以来シンガーの座付き作家として活躍し、監督として『ミッション:インポッシブル5』(2015年)が予定されているクリストファー・マッカリー

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 かの『ユージュアル・サスペクツ』コンビの作品ですから、脚本は抜群に良いんですよ。特筆すべき点をふたつ挙げますね。まずはエピローグ。“魔法の豆と天空の巨人”の伝説が語られるんですが、ここで主人公のジャックとイザベル姫が運命の糸で結ばれているってことが同時に描かれます。それもさらりとしたタッチで。私はここでぐいっと作品の世界に引き込まれましたね。もうひとつは悪役の設定。この手のファンタジーって悪の親玉はひとりってのが相場ですが、本作は捻りが加えられていて、悪の親玉がバトン・リレーみたいに入れ替わっていくんです。悪のリレーが誰もが知っている民話を先読み不能の21世紀のファンタジーに生まれ変わらせることに成功しています。

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 とは言え、本作の最大の見ものは巨人の軍団が猛進撃を始めるクライマックス。ここは現在、大人気のコミック『進撃の巨人』の実写版と言っても過言ではない。いやぁ、凄い迫力です、巨人の全力疾走や人間対巨人の○○○合戦は! このシーンを観たら、来年、公開予定の映画版『進撃の巨人』が心配になりますよ。日本映画がこれを超える事が出来るのか?って。
 そうそう、この映画、音楽もいいんですよ。オープニングからワクワクします!
 
夏休みはファンタジー三連発でお楽しみください。
それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年8月号)

2013/08/01(木) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第73回ジョセフ&ブルース主演「LOOPER/ルーパー」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
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星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

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 今月ご紹介するのはジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィリス主演の「LOOPER/ルーパー」 (2012年)。
 全米の批評家に絶賛され、各地の批評家協会賞で脚本賞を受賞した先読み不可能な物語が眼目の作品だから、出来る限り作品情報を得ずに観るのがオススメ。とは言え、情報がまったくゼロだと、見落としてしまうところもなきにしもあらず。そこで物語の内容には出来るだけ触れずにいくつかの注目ポイントを解説させてもらいます。

★一石二鳥の2044年カンザス

 近未来のアメリカって聞くと大概の人は「ブレードランナー」(1982年)の2019年のロスを思い浮かべませんか?イルミネーションを瞬かせる巨大ビルと、炎をあげる工場の煙突の間を空飛ぶ車がすり抜けていく…、アレです。

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 その影響は大きくて、以降のSF映画はすべてこのイメージなんですね。あのスティーブン・スピルバーグリュック・ベッソンですら「マイノリティ・リポート」(2002年)や「フィフス・エレメント」(1997年)で「ブレードランナー」の呪縛から逃れることが出来ませんでした。大監督がこの有様なのですから、その他の監督が描く近未来は推して知るべし。誰も観たことのない末来世界なんて今後、登場しないんだろうなぁ~と思ってしまいます。
 実際、数あるSF映画の中でオリジナリティがある末来世界だな~と誰もが思えるのは「ブレードランナー」と1968年に公開され、映画の舞台でさえ今となっては過去になっているスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」だけじゃないですかね。

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 「LOOPER/ルーパー」の監督&脚本のライアン・ジョンソンが物語の舞台に選んだのは2044年のアメリカ。
「また、ブレードランナーみたいな末来都市が舞台?」
「何回目?」
そう思いますよね。

 ところがどっこい、ジョンソンは只者じゃないんです。なんと場所をロスやニューヨークみたいな都会ではなく、中西部のカンザスにしました。ここは「オズの魔法使」 (1939年)の舞台になったところです。あの映画をご覧になった方は覚えているでしょう、カンザスがどれほど田舎だったか?地平線の彼方までトウモロコシ畑や牧草地が続いています。多分、ジョンソン監督はこの風景はこの先も変わらないだろうし、それに違和感を覚える観客もいないだろうと思ったんでしょうね。しかも現在と変わらないんだから、未来社会を描くための美術やCGの予算も抑えられて一石二鳥。

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 かくて「LOOPER/ルーパー」の未来社会は「ブレードランナー」を思い起こさせる凡百なものでなく、現在と変わらないというまさに、誰も見たことのなく、それでいてリアリティあるものになっています。いやぁ~、ジョンソン監督、あんたは偉い!

★二人一役の2044年カンザス

 「LOOPER/ルーパー」の物語のキーになるのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィリスが同一人物を演じること。どういうことかって言うとゴードン=レヴィットが年を取ったらブルースになるって訳なんです。けれども皆さんも薄々感づいているでしょうけど、ブルースはどんな役を演じてもブルース。特に最近はそうです。当然、今回に限り、ゴードン=レヴィットと共同でひとりの人物像を表現するなんてことをするはずもありません。大変なのはゴードン=レヴィット君です。自分がブルースの若い時だってことを観客に信じさせなければならないのですから。そもそもこの二人、全く似ていないんですよ。まさにミッション・インポッシブル!

 ゴードン=レヴィット君は頑張りました。目元と鼻筋に特殊メイクを施し、外見をブルースに近づけました。続いて表情。ブルースの芝居って目と口に特徴があるんです。世の中を斜に眺めているようなクールな眼差しと、常に不満げに尖らがした“スネオ口”です。
ジョセフ=ゴードン君の形態模写に陥らぬブルースの表情のコピーにはとにかく注目してご覧ください。そうすれば中盤のジョセフ=ゴードンからブルースへの変化が自然に行われるシーンには感動すら覚えるはず。

 ゴードン=レヴィット君に比べて楽をしているようなブルースですが、彼でなければ成立しないシーンがあります。そこでゴードン=レヴィット君に「そもそも論」とも言うべき“ある疑問”をぶつけられるのですが、その時のブルースの演技は見ものですよ。この時、ブルースは後で考えたら納得いかない答えを言うんですけど、その場では妙に説得力があるんです。まさに「有無を言わせない」って感じの演技なんですよ、ブルースは。

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 そうそう同じ時期に「クラウド アトラス」(2012年)って映画が公開されているんですが、こちらは「LOOPER/ルーパー」と違い、トム・ハンクスハル・ベリーら13人の俳優が凝ったメイクで人種・性別を越えて一人で何役も演じるのです。
 トム・ハンクスはどの役でも彼って判りますが、ヒュー・グラントが演じたすべての役は 一度観ただけでは絶対に判りませんよ。エンド ・クレジットで種明かしをするのでお楽しみに 。

★何でもアリの2044年カンザス

 「LOOPER/ルーパー」は様々なヒット映画のアイディアを組み合わせて作られています。 でもかなりひねった換骨奪胎がなされているので、元ネタを当てることは映画ファンにとって、ちょっとした映画検定試験になるかもしれません。この辺りがアメリカでの脚本の高評価の要因ではないかと思います。我こそはと思う方は、是非、挑戦してみてくださいね。

 そうそう、忘れるところでした。中盤でエミリー・ブラントが演じるヒロインのある行動にご注目。あまりに唐突なので、「えっ!?」って笑っちゃうぐらいびっくりしますよ。ある意味、ここが先読み不能の本作を象徴する名(迷?)場面かもしれません。何が起きるかは観てのお楽しみ!

それでは、また来月!

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年7月号)

2013/07/01(月) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第72回「PARKER/パーカー」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
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★“ビールなスター”って何?
 その主演作が劇場よりもレンタル市場で大ヒットするスターっていますよね。そういう人って昔からアクション映画のスターに多いんです。
 1980年代だったらチャック・ノリス、90年代だったらジャン・クロード・ヴァンダムスティーブン・セガール。最近ではジャッキー・チェンジェット・リードニー・イェンら香港組もこのグループですし、かつての大スター、メル・ギブソンニコラス・ケイジなんかもそうですよね。
 彼らに共通しているのは、「ヤツの映画なら何でも観る!」っていう熱心なファンがいるってことです。但し、“家でビール片手に”っていう条件付きですけど…。
 現在、そんなビールのお供に最適なスター、名付けて“ビールなスター”(勝手に命名)のチャンピオンと言えば、ジェイソン・ステイサムでしょう。

★“良いひと”ジェイソン・ステイサム
 2011~13年にかけて日本で公開されたステイサム出演作は7本。でも助演だった「エクスペンダブルズ2」(2012年)以外は、知らぬ間に公開が始まって、知らぬ間に公開が終わるというまさに“エクスペンダブルズ(消耗品)”状態。

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 そんなステイサムですが、“ビールなスター”の先輩たちとまるで違うところがあるんですよ。そもそも“ビールなスター”って基本的には「カッコ良いオレを見ろ!」「映画で目立つのは俺だけでいい!」っていうスターのエゴの塊みたいなところがあるんです。正直最近のヴァンダムやセガールの主演映画なんかエゴしかないって感じがします。だから相手役の女優は勿論、敵役も自分より格下の俳優をキャスティングして、自分が食われないようにしちゃうんですよ。そうなんです、“ビールなスター”っていうのはチームプレイが出来ないというか、最初からする気がないんですね。

 ところがステイサムは違います。男優であれ、女優であれ、相手を立てなければいけない場合には、ちゃんと立てるんです。例えば「エクスペンダブルズ」(2010年)。 先輩のスタローンを食おうなんてこれっぽっちも考えずに100%完璧な相棒に徹しましたし、「キラーエリート」(2011年)ではクライヴ・オーウェンと見せ場を分かち合い、ロバート・デ・ニーロから芝居を仕掛けられても無理に熱演をしようとはしませんでした。

 どうしてステイサムはここまで共演者に気を使うのでしょうか? それはどうやら前歴にあるようです。実はステイサムは若い時、水泳の飛込み競技のイギリス代表チームの選手だったのです。スポーツの世界では選手がエゴを捨て、チーム一丸とならなくては勝つことが出来ません。
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 多分、ステイサムはこの精神を忘れていないからこそ「エクスペンダブルズ2」に出演したのだと思います。だって一作目は配役順の第二位だったのに、二作目ではスタローン、シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ヴァンダム、そしてチャック・ノリスら先輩の影に隠れて目立たなくなることは最初から判り切っているんですよ。ステイサムに一人前のスターとして何の得もない仕事なんですから、降板しても何の不思議もありません。にもかかわらず出演したのは自分が出ないなんて言うと、映画について変な憶測が起きて迷惑がかかるかもしれないと考えたんじゃないですかね。

 作品のために自我を抑える能力。これはステイサムが水泳選手を引退した後のモデル業でより強くなったと思います。だってモデルの第一の目的と言えば商品をカッコ良く見せること。モデル自身ではありません。ステイサムにとって、ある映画やあるシーンで重要なのが自分ではなく共演者だった場合、自分が一歩も二歩も引くことに何の抵抗も感じないのでしょう。
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 その良い例が「トランスポーター」シリーズ(2001、05、08年)。同じカーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズでは車はただの道具でしたが、「トランスポーター」シリーズでは車はステイサムと同格の存在になっていましたよね。

★悪党パーカー登場!
 そんなステイサムの最新主演作は「PARKER/パーカー」(2013年)。リチャード・スタークが1962年から40年以上に渡って書き続けてきた犯罪小説『悪党パーカー』シリーズの一篇『地獄の分け前』の映画化です。
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 当然、ステイサムが演じるのは悪党パーカーです。このパーカー、日本ではあまり知られていませんが、アメリカとフランスでは根強い人気を誇り、計7回映画化されています。特にシリーズ第一作『人狩り』は1967年にリー・マーヴィン主演で「殺しの分け前/ポイント・ブランク」、1999年にメル・ギブソン主演で「ペイバック」と二度映画化されているほどの人気ぶり。
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 けれどもこれまでの映画化作品では“パーカー”というキャラクター名が使われていませんでした。なんでも原作者スタークがイメージの固定化を恐れて許可しなかったそうです。それが今回初めて認められたのです。日本に数えるほどしかいないであろう私のような『悪党パーカー』ファンにとってこんな嬉しいことはないでしょう。しかもステイサムの風貌は原作に記されたパーカーの外見にドンピシャなんです。期待が高まります。

 で、出来あがった作品にはびっくり! 前半は原作のテイスト通り、ハードでクールな男の犯罪映画なのですが、ジェニファー・ロペスが物語に絡みだす中盤以降は、彼女が主演の巻き込まれ型サスペンス・コメディになるのです。

 この大胆な脚色の是非は原作ファンの私にはかなり難しゅうございます。映画単体で見れば充分満足ですが、原作ファンとしては「こんなの悪党パーカーじゃないやい」って言いたくなりますし…、ステイサムは悪党パーカーにぴったりなんですけどね~。

 そこで原作シリーズを知っている人も知らない人も本作をご覧になって、良かったらその是非を私に教えてください。是とされるか非とされるかは判りませんが、ただ共演者を立てるステイサムの人柄の良さはきっと誰もが感じるはずです(?)

それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年6月号)

2013/06/01(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第71回「96時間/リベンジ」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
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★「ボーン・レガシー」で考える脚本家出身の監督の問題点

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 マット・デイモン主演の「ボーン・アイデンティティー」(2002年、04年、07年)シリーズの番外編「ボーン・スプレマシー」(2012年)ってご覧になりました?本家シリーズの脚本家トニー・ギルロイが監督を担当しているので、細部まで丁寧に作られた映画に仕上がっていましたね。でも物語の進むテンポがちょっぴり遅くなかったですか。これは脚本家出身の監督の映画にありがちなことなんです。

 脚本家は物語の理屈を重視します。例えばある人物が行動を起す場合、脚本家は舞台背景、人物が置かれている状況、行動を起こすきっかけと過程を具体的に考えます。つまり脚本家は物語を小説のように頭で語ろうとするのです。

 一方、生粋の映画監督は理屈を必要最小限に抑えようとします。なぜなら映画は映像で物語を語るものですから、主演スターを魅力的に撮り、目を奪う見せ場を用意し、シャープな編集を駆使して目で物語を語ろうと努めます。彼らにとって理屈は映画のテンポを阻害するものなのです。

 この脚本家出身の監督と生粋の監督の違いを具体的に知るのに最適な映画があります。それはアーノルド・シュワルツェネッガーが1985年に主演し、今なお一部で熱狂的な支持を集める「コマンドー」です。なんとこの映画、「ボーン・スプレマシー」で1時間かけた展開を5分でやってしまうのです。観終わった後、よくよく考えるとこの5分間の展開の物語上の意味は不明なのですが、観ている間は全く気になりません。機会があれば、是非、「コマンドー」「ボーン・スプレマシー」を見比べてください。映画における物語の語り方のなんたるかが判るはず。

★「コマンドー」は憎みきれないロクデナシ

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 とお薦めした「コマンドー」ですが、未見の方にあらかじめ言っておきますけど、この映画、はっきり言って脳みそまで筋肉なおバカ映画です。とにかくシュワが強すぎて、敵が弱すぎるんです。結果、全編爆笑どころと突っ込みどころの雨あられ状態。言ってみると、本作は友だちと一緒に酒を飲みながら観る“パーティムービー”なんですよね。かく言う私も友人たちとたまに本作を観るんですよ。最初のうちは爆笑の渦ですが、やがて、そのあまりに大雑把な展開のために笑いが凍りつき、最後には呆れて無言になってしまうのです。とは言え、私も私の友人も「コマンドー」を公開当時から何度も観ているんですけどね。「コマンドー」のように出来が悪いのは判るんだけど、駄作の一言で切り捨てられない映画を私はこう名付けています。“憎みきれないロクデナシ映画”ってね。

★「コマンドー」をちゃんと作ったら?

 そんな「コマンドー」の物語を大雑把に言うとこんな感じです。

 「元特殊部隊の精鋭メイトリックスの娘が謎の武装集団に誘拐された。救出のタイムリミットは11時間!今、父親の怒りの追撃が始まる!」

 元特殊部隊の父親?娘が誘拐?タイムリミット?
 あれっ?最近似たような設定の映画がありましたね。そう、「96時間」(2008年)です。こちらの物語はこんな感じです。

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 「元CIA工作員ブライアンの娘がパリで人身売買組織に誘拐された。救出のタイムリミットは96時間!今、父親の怒りの追撃が始まる!」

 ほぼ物語は一緒ですね。ただし、「96時間」のタイムリミットは「コマンドー」より9倍近くも猶予があるからでしょうか、細かいことをまったく気にしなかった「コマンドー」と違い、細部は結構練られていて、“憎みきれないロクデナシ映画”ではなく、普通に面白いアクション映画として、お薦め出来る仕上がりになっています。

 中でも映画ファンの間で語り草になっているのは、今まさに悪の組織に誘拐されようとする娘からのSOSの電話に父親が言う台詞です。ネタバレになるのでここでは書きませんが、これが無茶苦茶カッコ良いんです。この台詞を考え出した脚本のリュック・ベッソンロバート・マイク・ケイメンのコンビはスゴイ!と私は思います。
 勿論、設定が近似ですから、「96時間」の父親も「コマンドー」のシュワ同様、無敵です。正直、こっちも敵が可哀そうになってきます。でも「コマンドー」のようなバカバカしさは皆無なのです。その理由は主演のリーアム・ニーソンにあります。

★映画史上初の快挙を成し遂げたリーアム・ニーソン!

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 そもそもリーアム・ニーソンにはアクション映画のイメージはありませんでした。1981年に映画デビューして以来、シリアス・ドラマ専門の俳優だと思われていました。その頂点が「シンドラーのリスト」(1993年)です。その後、1999年に「スターウォーズ エピソード1」に出演してからは、「キングダム・オブ・ヘブン」(2005年)、「バットマン・ビギンズ」(2005年)、「ナルニア国物語 第一章:ライオンと魔女」(2005年)などで若者を導く“師匠”という一昔前のショーン・コネリーのような役を演じるようになったのです。これらの作品で生まれたニーソンの俳優としての特徴は“貫録”、“剛健”、“実直”というものです。

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 これが「96時間」というスティーブン・セガールが演じても不思議ではない映画に新鮮さを加えました。従来のアクションスターにある自己顕示的な見栄がニーソンにはないので、その無敵が「コマンドー」のようなギャグではなく、とてもリアルになったのです。

 かくてニーソン自身が、劇場公開されないビデオ・オリジナル映画だと思っていた「96時間」は全世界で興収2億ドルを越えるメガヒット作になったのです。そして俳優としての新しい面を披露したニーソンはその後、アクション映画に連続主演するようになりました。
 ニーソンが「96時間」に出演したのは55歳の時。 実は“50歳越えてからアクションスターになった人”は映画史上初めてなのです。そんなニーソンの最新作は「96時間/リベンジ」(2012年)。今度はどんな無敵の父親を見せてくれるでしょうか?

それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年5月号)

2013/05/01(水) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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