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“映画の星座盤”第55回「エンドクレジットの謎」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★エンドクレジットの謎
映画が終わると流れる黒字に白抜き文字のスタッフ&キャストの職と名前の列。これを映画用語ではエンドクレジットと言いますが、皆さんもご存じのようにアメリカ映画の場合、長い長い。特撮の多い映画なら5分6分は当たり前、中には10分もクレジットが続くものがあったりします。読者の中には「どうしてこんなに長いの?」って思う人もいるでしょうね。そこで今回の星座盤は“エンドクレジット”についてお送りします。

★長い長いエンドクレジットの始まり
 昔の映画はこんなにエンドクレジットは長くありませんでした。勿論、「80日間世界一周」(1956年)や「ウエスト・サイド物語」(1961年)、「2001年宇宙の旅」(1967年)のような映画の最初にスタッフ&キャストの名が出なかった作品は最後に長いエンドクレジットが流れるものがありましたが、大概の映画は“THE END”の後に配役表が流れるくらいで、スタッフは撮影監督など部門の長以外クレジットされることはありませんでした。これは当時の映画スタッフが映画会社や撮影所の社員だったことが理由です。

 70年代に入って、映画製作が社員スタッフではなく、作品毎に雇われるフリーのスタッフになってから変わりました。フリーのスタッフは社員スタッフと違って仕事の保障がありません。一作一作が勝負です。となると自分がどんな作品に関わってきたかが重要となります。その証明としてクレジットに自らの名前を表記させる必要が出たのです。そして79年、「スーパーマン」を観た観客は度肝を抜かれました。なんとエンドクレジットが8分も続いたのです。こうして長い長いエンドクレジットは一般化していきました。

★長い長いエンドクレジットを茶化せ!
 80年代に入るとエンドクレジットはどんどん長くなっていきます。当然、多くの観客は途中で席を立つ訳ですが、一部には奇矯な人たちがいました。日本では映画雑誌の読者を中心とした映画ファンです。彼らの間でエンドクレジットを最後まで観るのが“真の映画ファン”という意識が生まれたのです。当時、私もそんな映画ファンの一人でした。実際、エンドクレジットってじっくり見ると結構ためになります。ニューヨークが舞台の映画も撮影地がカナダだったとか、劇中に流れた楽曲や映画の中の映画のタイトルが判ったりとか、中にはさりげなくスタッフのオフザケがあったりとか面白いんです。

 でも、エンドクレジットに助手の助手や小道具の一部分を作った人だけでなく、出演者の送り迎え担当を始めとする移動車の運転手、食事の料理人の名前まで記されるようになると、さすがに映画ファンたちも考え始めました。映画に関わったすべての人を記すクレジットはあくまで映画業界の仲間内だけのことで、別に観客に見て貰いたいわけじゃないんじゃなかろうかと。

 そんな映画ファンの気持ちを察したのか、いくつかの映画でエンドクレジットを最後まで観る観客をおちょくるようになりました。86年の「フェリスはある朝突然に」ではエンドクレジットの後、主演のマシュー・ブロデリックが再び登場して、観客に向かって「まだいるの?終わりだよ。早く帰ってよ」って言いましたし、90年の「グレムリン2 ―新・種・誕・生―」ではエンドクレジットが流れる中、アニメキャラが出てきて「いつまで観てんの?」とか「他にすることないの?」とか観客をバカにします。普通、こんなことをされれば腹が立つのですが、映画ファンって不思議なもので、映画の作り手たちは自分たちのことをちゃんと気にしてくれているんだと良い方に解釈して、結局、長い長いエンドクレジットにつき合い続けたのです。

★長い長いエンドクレジットの後にギャグがある!
 先の「フェリス~」や「グレムリン2」の“エンドクレジットいじり”は、映画ファン向けの一種のサービスでしたが、やがてエンドクレジット終わりに物語に繋がるギャグのオチを入れる作品が現れるようになりました。

 この手の作品の最初は80年の「フライングハイ」。パニック映画を下敷きに古今東西の映画をパロディ化した映画なのですが、映画が始まるとすぐ、主人公は乗ってきたタクシーに「すぐ戻るから待っていてくれ」と言い残します。主人公は事件に巻き込まれて、それっきり帰ってきませんが、エンドクレジットの後もタクシーは待ち続けているのです。何てことのないギャグですが、エンドクレジットに最後までつき合う映画ファンはなんだかとっても得した気分になったものです。

 以後、多くのコメディ映画でエンドクレジットの後にちょこっとギャグを入れるのがお約束になっていきました。そして21世紀に入ると、この“最後のオチ”はコメディ映画以外にも波及したのです。

★長い長いエンドクレジットは最後まで観よう!
 「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ(2003~2011年)、「ワイルド・スピード」シリーズ(2001~2011年)、そして「アイアンマン」シリーズ(2008、2010年)、「インクレディブル・ハルク」(2008年)、「マイティ・ソー」(2011年)、「キャプテン・アメリカ」(2011年)のマーヴェルコミック映画はすべてエンドクレジットの後にオチがあることを観客に知らせましたが、大概の映画には告知がありません。だから劇場であれ、DVDであれ、エンドクレジットは最後まで観ることがおススメです。そうするのがやっぱり真の映画ファンじゃないですか。

 それでは、また来月。

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2012年1月号)
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2012/01/01(日) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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