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“映画の星座盤”第7回「レッスン!」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

★社交ダンスで不良少年を更生させる?!

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 今月星座をお作りするのは、アントニオ・バンデラス主演の「レッスン!」(2006年)。どういう話かって言うと、アントニオ・バンデラスが社交ダンスで不良少年たちを更生させるっていうもの。「社交ダンス」でそんなこと出来るの?」って大概の人はお思いになるでしょうね。かく言う私もそんな一人。でも、この話、実話が基なんです。ってことはアメリカには社交ダンスで真人間になった“不良”“ヤンキー”“ギャング”がいたってこと。いやぁ~、事実は小説よりも奇なりでこざいます。

 「レッスン!」みたいに、“何か”で不良少年たちを更生させる物語って、洋の東西問わず人気がありますよね。いくつか、この機会にご紹介しましょう。

 このジャンルの嚆矢になったのは、「87分署」シリーズのエド・マクベインがエヴァン・ハンター名義で書いた小説の映画化「暴力教室」(1955年)だと思います。もっともこの映画、最後は教師が力で不良少年をねじ伏せるので、カタルシスが生まれこそすれ、感動はありません。

★20世紀の教師と不良少年の感動映画
 感動作という王道を往く教師と不良少年の映画の始まりは、シドニー・ポワチエ主演の「いつも心に太陽を」(1967年)でしょう。製作・脚本・監督は「大脱走」(1963年)の脚本を担当し、後に全米に日本ブームを起こした「将軍 SHOGUN」(1980年)を書いたジェームズ・クラベル。ルルが歌う主題歌は日本でもヒットしました。未DVD化が残念です。

 70~80年代にかけて、この手の映画はあまり作られませんでした。これは映画にしようにも、ネタになるような教育実話がなかったからだと思います。だって、この頃のアメリカの学校は手が付けられないくらい荒れていたようですから。この時期の映画に「処刑教師」(1982年)ってのがあります。何と、教師が不良少年をタイトル通り、処刑してしまう恐ろしい内容なのです。こういう極端な内容が受け入れられた時代ってイヤですね~。

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 そんな荒れた学校が改善された80年代後半、ようやく感動の教育実話映画が作られます。モーガン・フリーマン主演、「ロッキー」(1976年)のジョン・G・アビルドセン監督の「ワイルド・チェンジ」(1989年)です。“クレージー”ジョーとあだ名された熱血校長が荒廃した高校を立て直す様を感動的に描いています。この校長が赴任してまずやることは、学校の“腐ったミカン”を排除すること。“金八先生”を観てきた日本人はこのシーンで度肝を抜かれること間違いなしです。これだけ書くと、酷い校長と思うかもしれませんが、そんなことは全くありません。やる気のある生徒、腐りかけている生徒には誠心誠意、指導を行うのです。その熱意には頭が下がります。中盤、体育館に生徒たちを集め、全員で往年の大ヒット曲であり、原題にもなっている“LEAN ON ME”を合唱するシーンは涙、涙。

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 1995年にはミシェル・ファイファーが海兵隊帰りの臨時教師として不良少年を指導する「デンジャラス・マインド」が作られました。普通の教師では考え付かない奇策とファイファーのクールな演技が見ものです。

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 そうそう、同じような軍人が教師になる映画に「野獣教師」(1996年)ってのもあります。こちらの主演はトム・ベレンジャー。基本は学校に巣食う麻薬組織退治を描いたアクションなんですが、ベレンジャーが教えることの喜びに目覚めてくるあたりはとても面白い、B級映画の快作です。

★21世紀の教師と不良少年の感動映画

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 21世紀に入った2005~2007年には、年一本のペースで不良少年更生実話が公開されました。まずサミュエル・L・ジャクソン主演の「コーチ・カーター」(2005年)。これはバスケットを通じて、少年たちに真っ当な道を歩かせる物語です。とは言え、物語の中心はバスケットではなくて、サミュエル・Lの若者たちへの説法。これが説得力充分で、聞き惚れてしまいます。

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 次はプロレスラー、“ザ・ロック”主演の「ギャングスターズ/明日へのタッチダウン」(2006年)。少年鑑別所の不良たちをアメリカン・フットボールで立ち直らせる物語です。本作の見ものは“ザ・ロック”の泣き虫な熱血先生ぶり。彼の泣き顔だけじゃなく、笑顔が素敵なんです。日本のドラマ「スクールウォーズ」に感動した人には絶対の自信を持ってお薦め!

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 最後は二度アカデミー賞主演女優賞受賞のヒラリー・スワンク主演の「フリーダム・ライターズ」(2007年)。これは日記を書かせることで不良少年を善導する新米女教師の物語です。生徒たちの心の叫びを書き綴った文章は涙腺直撃です。

 改めて不良少年の更生を描いた教育実話映画を挙げてみると、あることに気づきました。いずれの物語も一つの形式で作られているんですよ。“共同体”に“流れ者”がやって来て、“善行”を施して去って行くっていうね。これって、大昔の“英雄神話”、“宗教説話”、“伝説”からあり、日本の時代劇やアメリカの西部劇なんかで活用されている、最も親しみ易い物語の形式なんです。だから教育実話映画って、同じような内容でも、全然飽きないんですね。

 夜空に輝く星のごとく無数にある映画についてのあれこれ。それを星座のように繋げるのが映画の楽しみ。今回、お作りした星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月。

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2008年1月号)
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2008/01/01(火) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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