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“映画の星座盤”第10回「ベオウルフ 呪われし勇者」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★ハイテク・マニア、ゼメキス監督のパフォーマンス・キャプチャー
 原作となっているのは英文学最古の作品と言われる英雄叙事詩『ベオウルフ』。これを「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ(1985~1990年)、「フォレスト・ガンプ」(1994年)で知られるアカデミー賞監督ロバート・ゼメキスが完全映画化。ハリウッド一のハイテク・マニアで知られるゼメキス監督は「ポーラ・エクスプレス」(2004年)で活用したパフォーマンス・キャプチャーを駆使し、実写ともアニメともつかぬ独特の映像を作り上げています。例えば全裸の魔女を演じるアンジェリーナ・ジョリーは、実物以上のパーフェクト・ボディになり、老王を演じるアンソニー・ホプキンスは動きがちょっぴりコミカルになっていて、いつもの彼ではないみたいです。

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 しかし最大の見せ場はレイ・ウィンストン演じるベオウルフと魔人グレンデルとの戦い。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、このシーンこそ、パフォーマンス・キャプチャー技術が無くては不可能だったシーンです。まさに、映画史上、空前絶後、前代未聞の一大バトルが繰り広げられます。このシーンをより楽しむためには、マイク・マイヤーズ主演のスパイ・コメディ「オースティン・パワーズ」シリーズ(1997~2002年)のうち、1作目か2作目を事前に観ておくことがお薦め。えっ、あのおバカ・スパイと英雄ベオウルフにどういう関係があるのかって?それは観てのお楽しみ!

★『ベオウルフ』の実写映画化作
 ところで原作になっている叙事詩『ベオウルフ』ですが、過去に2度実写映画化されています。

まず1本目はクリストファー・ランバート主演の「ベオウルフ」(1999年)。舞台を荒廃した未来に移し、「マッドマックス」(1979年)調のSFファンタジー・アクションに仕上げています。当然、原典通り魔人グレンデルや魔女も登場しますが、ノリは同じランバート主演のカルト映画「ハイランダー」(1986年)に近いものになっています。共演は「ザ・シューター/極大射程」(1981年)のラテン・ビューティー、ローナ・ミトラ。監督は「オーメン/最後の闘争」(1981年)のグラハム・ベイカー。

 2本目は「300/スリーハンドレッド」(2007年)のジェラール・バトラー主演の「ベオウルフ」(2005年)。こちらの時代設定は原典に忠実なのですが、映像化されているのは魔人グレンデル退治の部分のみ。しかもそのグレンデルは他の映画のような魔人ではなく、ただの大男で、かつ人を襲うには襲うなりの理由があるって感じで同情的に描かれています。こうなると当然、主人公ベオウルフも自らの使命に疑問を感じるようになります。そうなのです。この映画は、伝説の真実の姿を明らかにしようとしている野心作なのです。荒涼としたアイスランドの自然の中で繰り広げられる重厚な人間ドラマは古代英雄叙事詩にゼメキス版にはない光を当てています。共演は「死ぬまでにしたい10のこと」(2003年)のサラ・ポーリーと、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」(2006年)のステラン・スカルスガルド。

★『ベオウルフ』に影響を受けた作品
 さて、次に『ベオウルフ』の物語に影響を受けた作品を2本、ご紹介しましょう。
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 1本目はアントニオ・バンデラス主演の「13ウォリアーズ」(1999年)。「ジュラシック・パーク」(1993年)のマイケル・クライトンの小説『北人伝説』を、「ダイ・ハード」(1993年)のジョン・マクティアナン監督で映画化した作品です。時は中世、町を追われたイスラムの詩人がバイキングの“13番目の戦士”となり、夜、霧と共に現れる魔物軍団と闘うというのがお話し。「これのどこが『ベオウルフ』やねん?」って思われるかも知れませんが、どうしてどうして物語の細部は完璧に『ベオウルフ』なのです。ゼメキス版の「ベオウルフ」を観て、“ベオウルフ神話”を分かった後で観ると、「へぇ~、うまい具合にアレンジしたなぁ~」と感心すること、間違い無し。
 こんなことを書くと、「13ウォリアーズ」は「ベオウルフ」の後じゃないと楽しめないと思ってしまう方がいるかもしれませんが、それは早合点。「13ウォリアーズ」単体でも十分、楽しめる作品になっています。クライマックスの雨の中の大決戦は、黒澤明監督の「七人の侍」(1954年)ばりですし、何と言っても全編で男気大爆発。特に本作の“ベオウルフ”にあたるバイキングの王の最期は、“ラオウ”か、はたまた“明日のジョー”かというくらい燃えます!

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 2本目は「エクスカリバー」(1981年)。これはイギリス最初の王アーサーの伝説を記した15世紀の書物『アーサー王の死』を原典に限りなく忠実に映像化した作品です。監督は1970~80年代、イギリス映画界の異才と呼ばれたジョン・ブアマン。出演は若手時代のヘレン・ミレン、ガブリエル・バーン、リーアム・ニーソンの面々。美しいイギリスの自然の中、剣と魔法を交錯させて“神々の黄昏”を描き、英米でカルト人気を誇る野心作です(余談ですが、本作は誰もが一度は聴いたことのあるオルフの歌劇「カルミナ・ブラーナ」の一節を効果的に使った最初の映画です)。
 本作と『ベオウルフ』の繋がりは終盤。主人公を待ち受ける過酷な運命がほぼ同じなのです。この2作を続けて観れば、古代ヨーロッパの雄大な神話世界の潮流の一端に触れたような気がするでしょう。

 夜空に輝く星のごとく無数にある映画についてのあれこれ。それを星座のように繋げるのが映画の楽しみ。今回、お作りした星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月。

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2008年4月号)
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2008/04/01(火) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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