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“映画の星座盤”第11回「グッド・シェパード」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★「グッド・シェパード」映画化実現までの道のり
 「グッド・シェパード」(2006年)は、アメリカの諜報機関“CIA”の誕生から1960年代初頭の“ピッグス湾事件”までの歴史を、一人の男の人生航路に重ねて描いた作品です。

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 監督は名優ロバート・デ・ニーロ。1993年の「ブロンクス物語/愛に包まれた街」以来の監督作になります。本作はデ・ニーロにとって夢の企画でした。「フォレスト・ガンプ」(1994年)でアカデミー賞脚本賞を受賞し、「イージーライダー」(1999年)、「ミュンヘン」(2005年)など骨太の社会派映画を得意とするエリック・ロスによる脚本をデ・ニーロが読んだのは、今から9年前。その当時はデ・ニーロがアカデミー賞助演男優賞を獲得した作品、「ゴッドファーザーPARTII」(1974年)の巨匠フランシス・フォード・コッポラが監督する予定だったそうです。結局、企画は実現しませんでしたが、脚本を気に入ったデ・ニーロは自ら2作目の監督作として権利を押さえ、映画化の機会をうかがいました。
 なにぶん硬派な物語ゆえに、なかなか映画会社から色よい返事がもらえなかったり、デ・ニーロ自身が前立腺ガンに冒され、長期にわたる闘病生活が余儀なくされたりと、様々な困難に見舞われましたが、2005年8月、デ・ニーロの執念が実り、ようやく撮影が開始されました。

★豪華スターの共演とデ・ニーロの演出スタイル
 主演はマット・デイモン。代表作「ボーン・アイデンティティー」シリーズ(2002、2004、2007年)とは真逆の内向的なスパイをリアルに演じています。芝居の雰囲気は「ディパーテッド」(2006年)の時に似ています。
 デイモンを囲むのはハリウッドを代表する演技派スターたち。「17歳のカルテ」(2000年)でアカデミー賞助演女優賞受賞のアンジェリーナ・ジョリー、「普通の人々」(1980年)で助演男優賞受賞のティモシー・ハットン、「グッドフェローズ」(1990年)で助演男優賞受賞のジョー・ペシ、「蜘蛛女のキス」(1985年)で主演男優賞受賞のウィリアム・ハート。これに「ゴッドファーザーPARTII」、「レイジング・ブル」(1980年)で主演男優賞受賞のデ・ニーロが加わる訳ですから、出演者はさながらアカデミー賞紳士録のよう。

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 14年ぶりとなるデ・二―ロの演出には、部分部分にそもそも本作を監督する予定だったコッポラの「ゴッドファーザー」3部作(1972、74、90年)の影響が見受けられます。現在と過去が交差する物語展開は「ゴッドファーザーPARTII」と酷似していますし、家族と組織の相克に悩む主人公のキャラは「ゴッドファーザー」シリーズでアル・パチーノが演じたマイケル・コルレオーネと重なります。とりわけ目を引くのがクライマックスの段取り。ここでデ・ニーロ監督は、コッポラが「ゴッドファーザー」1作目で作り上げ、以後のシリーズでも繰り返し絶賛された編集スタイルを踏襲しています(このスタイルは「スターウォーズ エピソード3/シスの復讐」(2005年)でも使われています)。このほかにも本作には「ゴッドファーザー」を思い起こさせる芝居やシチュエーションが多数あるので、「ゴッドファーザー」ファンは「やってるねっ!ロバート!」ってニンマリしてしまいます。
 ちなみにデ・ニーロ監督デビュー作「ブロンクス物語/愛に包まれた街」では「タクシードライバー」(1976年)などの名コンビ、マーティン・スコセッシのスタイルの演出を見せています。

★イエール大学謎の秘密結社“スカル・アンド・ボーンズ”

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 ところで、本作の序盤の鍵として、イエール大学内に存在する“スカル・アンド・ボーンズ”という秘密結社が登場します。これは、現アメリカ大統領ジョージ・ブッシュも祖父の代からメンバーと言われ、アメリカの上流階級の子弟でなければ入会できない実在のサークルなのです。その内情は秘密のヴェールに隠され、部外者はうかがい知ることはできません。それ故に想像力が喚起されるのでしょう。この結社を素材にした映画は他にも作られています。タイトルは「ザ・スカルズ/髑髏の誓い」(2000年)。監督は「トリプルX」(2002年)、「ステルス」(2005年)のロブ・コーエン、主演はコーエン監督と「ワイルド・スピード」(2001年)で組んだポール・ウォーカー。“スカル・アンド・ボーンズ”は“ショッカー”さながらの悪の秘密結社として描かれたサスペンスになっています。アメリカではかなり好評だったようで、続編「ザ・スカルズII/髑髏の紋章」(2002年)、「ザ・スカルズ 秘密結社:権力の図式」(2003年)と続々と製作されています。少々馬鹿馬鹿しい部分もありますが、「グッド・シェパード」の主要人物の背景をよりよく知るには最適の作品です。

★米ソ冷戦時代を扱った映画
 また、本作では米ソ冷戦時代の2つの事件が物語の重要なファクターになっています。ひとつはカストロによるキューバ革命への対抗策として1961年に実行された“ピッグス湾事件”。もうひとつは“コンゴ動乱”。どちらも劇中では観客がこれらの史実を知っていることを前提としてさらりとしか描かれていません。そこで、サブ・テキストにある映画をいくつか紹介しておきましょう。

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 まず“ピッグス湾事件”は、ケヴィン・コスナー主演、オリヴァー・ストーン監督の「JFK」(1991年)。事件の内幕がより具体的に描かれています。「グッド・シェパード」と続けて観ると、事件がケネディ大統領暗殺まで一直線に繋がっていることがよくわかります。“ピッグス湾事件”以降のキューバとアメリカの緊張状態は、同じコスナー主演の「13デイズ」(2001年)でじっくりと描かれています。併せて観るのがお薦めです。
 “コンゴ動乱”を知るには、1960年、ベルギーから独立したコンゴ民主共和国の初代首相ルムンバの生涯を描いた「暗殺前夜 ルムンバの叫び」(2000年)がお薦め。米ソ両陣営の非情な駆け引きの場にされた、当時のコンゴの政治状況を余すところなく抉り出しています。

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 夜空に輝く星のごとく無数にある映画についてのあれこれ。それを星座のように繋げるのが映画の楽しみ。今回、お作りした星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月。

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2008年5月号)
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2008/05/01(木) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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