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“映画の星座盤”第20回「ランボー」誕生秘話

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

firstblood_poster.jpg

★CHAPTER 1:映画化への長い道
 今月は「ランボー/最後の戦場」(2008年)のリリースを記念して「ランボー」(1982年)誕生秘話をお送りします。

 「ランボー」の原作は、デイヴィッド・マレルが1972年に発表したペーパーバック小説“FIRST BLOOD”。特殊部隊出身の男と田舎町の警官隊との死闘の中に当時のアメリカの社会問題だった“ベトナム帰還兵”の心の病を盛り込んだ内容は評判を集め、ハリウッドのメジャー映画会社ワーナー・ブラザーズが映画化権を取得しました。

 早速、ワーナーはランボー役としてクリント・イーストウッドジェームズ・ガーナーに二股交渉を行いました。ガーナーは日本ではイマイチ知名度は高くありませんが、アメリカでは誰もが知っている大スターの1人であり、ランボー同様にインディアンの血を引いています。しかし2人の返事は同時に「NO!」。ガーナーからは「アメリカの警官を殺すような役はしたくない」とまで言われてしまいました。

 次に、当時若手演技派として注目を集めていたアル・パチーノの名が挙がりますが、パチーノも拒絶。そんな時、ある有名監督が企画に興味を示しました。ニューヨークの演壇出身で「卒業」(1967年)でアカデミー監督賞を受賞し、トップ監督の1人だったマイク・ニコルズです。ニコルズはランボー役に「卒業」で彼がスターにした演技派ダスティン・ホフマンを推しました。しかしホフマンには「暴力的すぎる」と断られてしまいます。このホフマンの拒否が決定的になり、“FIRST BLOOD”の映画化は頓挫することとなりました。

 それから数年後、映画化権はワーナーから中東出身の新人プロデューサー、マリオ・カサールとアンドリュー・ヴァイナに移りました。ハリウッド進出の第1作として“FIRST BLOOD”の映画化に執念を燃やす2人は、なんと、主人公ランボー役として伝説的なアクションスター、スティーブ・マックィーンの獲得に成功。かくてハリウッド内部で“永遠の企画映画”と言われた“FIRST BLOOD”の映画化は具体化したかに見えました。しかし好事魔多しです。なんと、頼みの綱のマックィーンが癌に倒れ、1980年にこの世を去ってしまったのです。今更、後戻りは出来ないカサールとヴァイナは、代役としてニック・ノルティジョン・トラボルタに声をかけますが、キャリアが頭打ち状態にあったトラボルタからも断られてしまう始末。再び暗礁に乗り上げる“FIRST BLOOD”映画化計画。

 ここで登場したのがシルベスター・スタローンです。「ロッキー」(1976年)1本でスターになったものの、その後の作品に恵まれず“一発屋”と言われ始めていたスタローンは、ギャラを下げてまで出演すると言い、企画を救ったのでした。

★CHAPTER 2:そして公開
 ランボーの上官トラウトマン役で出演していたカーク・ダグラスの撮影開始直後の降板、スタントマンの死亡事故、スタローンの4ヵ所の骨折などのトラブルの末、完成した作品が公開されたのは1982年10月。カサールとヴァイナの喜びもひとしおだったでしょう。しかし興行は今ひとつ伸びません。悲劇的な原作の終幕を改変したとはいえ、“ベトナム帰還兵の心の闇”というテーマが重かったのかもしれません。結局、興行は中規模のヒットで終わりました。カサールとヴァイナの救いは好意的な批評を受けたことと、海外上映権を完成前に各国の配給会社に売却していたので債務を抱えなくていいことでした。

★CHAPTER 3 :日本での公開
 日本での劇場配給権を買ったのは東宝東和です。カンヌ映画祭で上映された40分ダイジェスト映像を5分観ただけで契約を終結したそうです。東宝東和が期待したのは、“スタローン主演の爆裂痛快アクション”でした。

 その後、納品された作品を観た東宝東和関係者はびっくりしました。確かにスタローンが肉体の限界に挑んだアクショんは凄い。その上、哀愁漂う主人公が我慢に我慢を重ねた末に爆発するという物語は、日本人の感性にぴったり。問題は、アメリカの田舎町が舞台で派手さがないことと、ベトナム帰還兵問題が日本人には理解しずらい上に、ラストもハッピーエンディングではないこと。絶大な期待をかけて1983年の正月映画として拡大公開を計画していたものの、このままでは成功はおぼつかない。そこで東宝東和は考えました…。

★“FIRST BLOOD”から“ランボー”へ
 ボクシングで最初に対戦相手を流血させた時に使う慣用句“DRAW FIRST BLOOD”から取られ、意訳すると「先制攻撃」、「先に仕掛ける」って意味になる原題を使わず、主人公の名前“ランボー”を日本公開タイトルに変更しました。人名タイトルはスタローンの代表作「ロッキー」に繋がり、「ロッキーの次はランボーだ!!」って謳いやすいという判断でした。しかもランボーという語感は日本語の“乱暴”に通じ、実際、映画の中身とも合います。また当時、日本でランボーと言えば、フランスの詩人アルチュール・ランボーのことでした。多分、東宝東和ではこんな会話がなされたと思います?!

「このタイトルにしたら、詩人の伝記映画と間違えた女性の集客も期待できるぞ!」

★チラシ&ポスターはとにかく派手に!

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 次に東宝東和はチラシとポスターを出来るだけ派手にしました。こんな感じです。劇中には登場しない摩天楼をバックに、米軍ライフルを持った巨大なスタローン。その下にはさながら彫刻のようにデザインされた“ランボー”の大型タイトル文字。そのまた下には無数の兵隊と火を噴くパトカー、そしてバイクを駆るスタローン。何だかよくわからないけれど、アクション超大作というイメージだけは確実に伝わる仕上がりでした。

 公開されるや、東宝東和の宣伝プロモーションは功を奏しました。なんと本国アメリカを超える興収で大ヒットを記録したのです。その成功にカサールら作品関係者は驚き、3年後に公開された続編のタイトルを日本に倣い、“RAMBO/FIRST BLOOD PART II”に変更し、世界中に、一大“ランボー・ブーム”を巻き起こす大ヒットを達成したのでした。

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 もし、東宝東和の公開プランが無かったら、「ランボー」がこれほどの成功を収めたでしょうか?それは神のみぞ知ることです。

 夜空に輝く星のごとく無数にある映画についてのあれこれ。それを星座のように繋げるのが映画の楽しみ。今回、お作りした星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月。

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2009年2月号)
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2009/02/01(日) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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