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“映画の星座盤”第67回「プロメテウス」「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★人類を進化させたのは異星人?
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 1960年代初頭、カリフォルニアのジョージ・ハント・ウィリアムスンという博士がとんでもない説を言い出しました。
それは「太古の昔、異星人が地球にやってきて、サルを改良して人間を創造した。その証拠は世界各地に残る巨大遺跡や語り継がれている神話の中に隠されている」というものでした。

 この説は世界中のSF関係者に多大な影響を与えました。その一人に作家・アーサー・C・クラークがいます。彼は月で見つかった人工物に端を発する異星人とのファースト・コンタクトを描いた『前哨』という小説を発表します。やがてこの物語から映画史に残る大傑作が生まれます。それはスタンリー・キューブリック監督による「2001年宇宙の旅」(1968年)です。もっとも頭の切れるキューブリックはウィリアムスンの説を判り易く描いたら、ただのホラ話としてインテリからバカにされると思ったのでしょう。“異星人が人類の進化に関与した”という物語の本質を具体的に描きませんでした。結果、今もなお「2001年宇宙の旅」は“難解”で敷居の高い作品と言われ続けています。
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 この高尚な「2001年宇宙の旅」の登場で“異星人古代地球来訪説”はより注目を集めました。そんな時に、スイスの旅行家で考古学者のエーリッヒ・フォン・デニケンが『神々の戦車?』(邦題『未来の記憶』)を出版。これは例えば、アスカの地上絵は宇宙船の滑走路だったとか、ピラミッドやモアイ像は異星人が作ったとか、南米の地下迷宮には異星人の資料庫があるとか、日本の遮光器土偶は宇宙服を着た異星人を象ったものだとか、夢広がる内容で読者の心を鷲掴みにし、1970年代前半に世界的ベストセラーになりました。デニケンは一躍、時の人になり、特に日本では数多くのコミック、アニメに多大な影響を与え、多くの追随者と追随書を生んだのです。

 しかしその後、考古学者からデニケンの論理の展開の飛躍を指摘されたり、ジャーナリストがデニケンの現地調査のウソが暴かれたりして、“異星人古代地球来訪説”はキューブリックが恐れた通りバカにされるようになったのです。
 そんな忘れられた“珍説”を21世紀の今日、スクリーンに蘇らせた男がいます。その男の名はリドリー・スコット。そうです。1月9日にリリースされる彼の最新作「プロメテウス」“異星人古代地球来訪説”(2012年)は、懐かしのデニケン説に全面的に依拠した映画なのです。

★デニケン映画から、唖然呆然の大転調
 「プロメテウス」は荒涼とした大地で行われる異星人の儀式から始まります。劇中では説明がないので、多くの人は「何のこと?」ってなるでしょう。ネタバレ覚悟で説明しますと、このシーンの舞台は太古の地球。そこに異星人がやってきて、海に自らのDNAを拡散させた訳です。生命は海から生まれたのはご存じの通り。つまりこのシーンでリドリー・スコットが描いたのは、人類というか、地球の生命は異星人のDNAから誕生したものってことです。

 その後、物語は世界各地の古代壁画に共通して記されている星図が導く未知の惑星での驚異の冒険が展開します。その惑星にはモアイ像を思わせる石像なんかあったりして、デニケン色がどんどん強くなってきます。ノリは判りやすい「2001年宇宙の旅」って感じです。
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 ところが科学者チームがある洞窟に入ったところで物語は一転します。その洞窟には無数の卵が並んでいるんです。その形状はある映画に出てきた凶悪宇宙生物の卵とそっくり。その映画とは1979年に公開され、リドリー・スコット監督の大出世作となった「エイリアン」です。そうなんです。「プロメテウス」「エイリアン」の数十年前の出来事を描く前日談なんですよ。つまり本作は人類の起源解明なんて大風呂敷を広げておいて、本当はエイリアンの起源を明かす方をメインにしている映画なのです。

 劇場公開の時は、映画会社がなぜか「エイリアン」との関連性を正式に公表しなかったので(なんでも緘口令を敷いたんですって)、多くの観客は心の準備が出来ず、終盤の展開に唖然呆然とする人続出だったそうです。中には「「エイリアン」のマネやんけ!」と批判した人もいたとか。でもそれは筋違い。スコット監督は最初から本作を「エイリアン」前日談シリーズの第一部として製作したんです。ですからDVDやブルーレイで本作を観る時は、そのつもりでお楽しみください。ちなみに続編は2014年公開予定です。

★前日談がもう一本!
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 ところで「エイリアン」と人気を二分するSFホラー映画に「遊星からの物体X」(1982年)があります。こちらに登場するのは太古の昔にから南極の氷の底に眠っていた、生き物を同化する不定的の生命体。
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 「エイリアン」と違って、劇場公開時にはヒットしなかったものの、ビデオで評価を高め、続編となるTVゲームまで作られるほどの人気を得るに至りました。そして「エイリアン」と同様、前日談が製作されたのです。「プロメテウス」と同日リリースになる「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」がそれです。オリジナルで少し描かれたノルウェーの南極観測隊全滅の模様が描かれます。

 オリジナルは男ばかりのむさい映画でしたが、今回は主人公を女性にして、ちょっぴり華のある味わいにしています。しかしやはり、注目はどんな風に物語を前作に繋げるかってこと。オリジナルのファンは物語が進みにつれ「大丈夫か?」と心配になってくること確実です。この変なサスペンスが本作の肝でしょう。どう繋がるかは観てのお楽しみですが、あっと驚く展開が用意されています。
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 実は「エイリアン」の脚本を書いたダン・オバノンとオリジナルの「物体X」を監督したジョン・カーペンターはUSCの映画学科の同級生で、「ダークスター」(1974年)というSF映画を一緒に作った仲なんです。この「ダークスター」は、機会があったら、是非、観てくださいね。「ヘェ~」ってなりますから。

 それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年1月号)
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2013/01/03(木) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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