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“映画の星座盤”第68回「海猿」&「エアポート」シリーズ

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

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★「俺にかまわず言ってくれ~!」と「君に言っておきたいことがある…」
 「海猿」シリーズ最終作「BRAVE HEARTS」がリリースされましたね。ご覧になった方は「これが最後」って言われてもピンと来ないかもしれません。だっていくらでも続きが作れそうな終わり方なのですもの。でもこれで終わりです。何でも製作のフジテレビが原作者の佐藤秀峰を怒らせてしまって、続編の製作はまかりならんって言われたんですって。シリーズのファンは残念無念な事態です。

 ところで私は、「海猿」って、“観客の涙を無駄に流させる映画”だと思っているんです。大体、「海猿」シリーズみたいなアクション系の映画の“泣き”の定番展開には二つありますよね。
 一つは自らの命を投げ出して誰かを助けるって展開。俗に言う「俺にかまわず行ってくれ~!」ってヤツ。日本人はこれが大好きですよね~。
 もう一つは自らの死を覚悟して、最後に愛する人に気持ちを伝えるって展開。登場人物がこのどちらかの行動を取った時点で、俗に言う“死亡フラグ”が立った状態になります。そうなると観客に哀しみの感情が刺激され、それは涙腺に伝わって感動の涙が流れることになります。例えば「アルマゲドン」(1997年)なんかクライマックスでこの二つを合体させた展開を用意して、観客の涙腺にそれこそアルマゲドン級の攻撃を行っていました。
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★返して、私の涙を返して!
 で、「海猿」シリーズなんですが映画第2作「LIMIT OF LOVE」(2006年)では主演の伊藤英明が後者の行動を見せます。主人公が死亡確定の行動を取った訳ですから、観客の多くは結果が判る前に自動的に涙腺に頬を濡らす指令を出してしまいました。実際、劇場では鼻をすする音がサラウンド状態です。実は私の家内もそのサラウンド音声の一員で、横でズルズルと鼻をすすっていました。しかし映画が終わった時に彼女は言いました。
「返して、私の涙を返して」
なぜ、彼女がこう言ったかは、観ていない人でも判るでしょう? だってシリーズが続いているんだから。
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 今回リリースされた「BRAVE HEARTS」でも“泣き”の定番展開が用意されていましたね。さすがに劇場では観客の多くも学習したのか、「LIMIT OF LOVE」ほど涙のサラウンドにはなっていませんでしたけど、私の横の女性は鼻をグシュングシュン。その音を聞きながら、思ったものです。
「キミのその心の汗は無駄に流されているよ」
 ちなみに「LIMIT OF LOVE」がアメリカはニューヨークで公開された時、くだんの“泣き”の定番シーンでは爆笑が起こったそうです。曰く、
「あの危機的状況で、長々プロポーズをするなんてありえない!」

★まじめ?ふまじめ?「エアポート」最終作
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 アメリカの観客は真面目なパニック映画「LIMIT OF LOVE」をパロディ映画だと思ったようです。実は同じようなパニック映画で、作り手は真面目に作ったのに、観客は大爆笑という“予期せぬ”パロディ映画になった作品があるんです。その映画のタイトルは、「エアポート80」(1979年)。
 これは1970年代、「大空港」(1970年)を第1作として、ハリウッド・メジャー映画会社ユニバーサルが製作した航空パニックシリーズ「エアポート」シリーズの第4作にして、最終作です。このシリーズの基本はハリウッドの中年大スターを主演に据え、相手役に若手女優を用意し、脇にはテレビで顔の知れた性格俳優と半分引退状態の往年のスターを配し、大掛かりな航空事故を描くってものでした。日本でも大人気で、「エアポート75」(1974年)と「エアポート77」(1977年)はその年の興収ベスト10に入るヒット作でした。
 そして「エアポート80」(1979年)。武器商人が、不正取引を知った女性が乗る超音速旅客機コンコルドを撃墜しようとあの手この手の攻撃を繰り返すという物語です。費用対効果を考えるとかなり無理のある計画ですが、スケールは抜群でしょう。
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★さらば、エアポート!
 コンコルドはフランスの飛行機だから乗務員はフランス人でなければなりません。でもアメリカ人はフランスの俳優なんてほとんど知らないのです。そうなるとアメリカのスターにフランス人を演じさせるのが順当。しかしプロデューサーはそうしませんでした。アメリカ人は知らないフランスのスターを二人、起用したのです。
 一人はアラン・ドロン。もう一人は「エマニエル夫人」(1973年)ことシルビア・クリステル。思うにこのキャスティングは「エアポート」人気の高い上に、フランス映画も好まれている日本のマーケットを見込んだものだったのでしょう。実際、当時、日本でドロンとクリステルを知らない人はいなかったのですから。

 しかしその目論見通りにはいきませんでした。まず最初に公開されたアメリカでは観たこともない主演スター、ドロンの気取った演技と乗客を乗せたまま宙返りをして戦闘機の攻撃を避けるコンコルドの「ありえねぇ~!」展開に失笑を通り越して大爆笑。かくてユニバーサルは公開1週間後から本作を“コメディ”として宣伝し直したそうです。
 日本では同じ年の末に公開されましたが、ユニバーサルは知りませんでした。その頃の日本ではドロンもクリステルも集客能力がまったくなかったということを…。かくてエアポート・シリーズは本作で終了となりました。

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 そんな哀れな「エアポート80」ですが、今では友達なんかと一緒に観ながら、突っ込みを入れて楽しむ“映画パーティ”には最適の一本として評価されています。ちなみに「エアポート75」「エアポート77」もいいですよ。“75”はハリウッド大作史上主演女優が最も醜い映画ですし、“77”の海難事故は「海猿 BRAVE HEARTS」とそっくりです。「海猿」も終わることですから、是非、ご覧になってください。

 それでは、また来月!

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年2月号)
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2013/02/02(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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