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“映画の星座盤”第69回「エクスペンダブルズ2」消耗品映画3/2発売!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★その昔、東映に電話をすると…
トゥルル~、トゥルル~、トゥルル~、ガチャ
「はい、男の東映です」
 1960年代半ばから1970年代半ば頃まで、映画会社の東映に電話した人が最初に聞く第一声がこうだったそうです。電話していきなりこんな事、言われたらビックリしますよね~。でも当時の人はみんな、普通に受けいれていたそうです。どうしてかって?だって当時の東映はまさに“男の世界”、英語で言ったら“MANDOM”だったんですもの。

 今でこそ、東映って言ったら、戦隊もの&仮面ライダーなど変身ヒーローものか「プリキュア」シリーズなんかのアニメを作っている映画会社って印象ですけど、当時は違いました。
 東西の両横綱として鶴田浩二と高倉健が君臨し、大関クラスには菅原文太に若山富三郎、その下には千葉真一、松方弘樹、梅宮辰夫、大木実、待田京介、渡瀬恒彦など錚々たる男優陣がずらりと専属俳優として活躍していたのです。そしてこのメンツをそれこそ、麻雀の牌のように組み合わせ、“やくざ映画”を初めとする男性のみをターゲットにした映画を量産していたのです。

 量産ってどれぐらいだと思います? 今でも映画は大コケしない限り、最低ひと月は公開するでしょう。当時は大体2週間。それも2本立て。毎年40~50本、そんな男性しか面白がれない映画をベルトコンベヤー式に作り続けていたのです。

 当然、劇場は野郎ばっかりです。で、そんな野郎を出迎えるのが、映画館の壁にずらりと張られた専属男性スターたちのポートレート。これが笑っているのが少ないんですよ。精々、千葉真一か松方弘樹ぐらい私も子供の頃、春と夏に公開される“東映まんがまつり”で東映の映画館に行く度に、この“男の壁”を目撃しましたが、そりゃあ、理解不能でしたよ。「なんでおっさんの写真ばっかりなんやろか?」って。
 作っている映画もそれを上映する映画館もこんな調子でしたら、「男の東映です!」っていきなり言われても、当時は誰も変に思わなかったのも判るでしょ。
 
★ハリウッドにもある“男”の映画会社
 その昔の東映はまさに“男による男のための男の映画会社”だったんですが、現代のハリウッドには同じような映画会社があるのです。
 その名はミレニアム・フィルムズ
 イスラエル出身のアヴィ・ラーナーというプロデューサーが主催するプロダクションです。作る映画は東映同様、男性客をターゲットにしたアクション、サスペンス、ホラー。中でもアクションとサスペンスが得意中の得意。だって出演するスターの面子が凄いんですもの。
 シルベスター・スタローン、ブルース・ウィリス、ニコラス・ケイジ、ジェイソン・ステイサム、スティーブン・セガール、ジャン=クロード・ヴァンダム、ドルフ・ラングレン、ウェズリー・スナイプス、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノとハリウッド版東映とも言える男・男・男。しかも製作体制は往年の東映と同じくベルトコンベヤー方式。2009年には年間12本も製作・公開したんですよ。まさにハリウッドの東映。
 電話したら “Hi! THIS IS MILLENIUM FILMS.MOVIE COMPANY FOR MEN!”って応対しそうです。

 ミレニアム・フィルムズと往年の東映には他にも共通点があります。それは真面目な批評家からまともに相手にして貰えないもの。そもそも批評家というものはアクションやサスペンスには冷たいのです。しかもミレニアム・フィルムズにしろ東映にしろ、そんなジャンルの映画をただ作っているだけじゃなく量産している訳ですから、批評家にしてみれば印象最悪。映画という芸術形態を浪費している!って訳です。
 批評家の言い分も判りますよ、ミレニアム・フィルムズのアクション映画も東映のやくざ映画も観てしばらくすると記憶がごっちゃになって「どれがどれだったっけ?」ってなりますもの。まさに“見捨ての消耗品”映画です。

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 でもそんな映画の中にも時として、すごい映画が生まれたりします。東映なら、北野武の「アウトレイジ」シリーズ(2010年、2012年)に多大な影響を与えた深作欣二監督の「仁義なき戦い」5部作(1973~74年)や、三島由紀夫が絶賛した「博打打ち 総長賭博」(1968年)なんて傑作がそうです。ミレニアム・フィルムズにはまだそんな作品は生まれていませんが、「世の男性が俺たちの映画で浮世の憂さを忘れてくれたらそれでいいんだ!」って、総帥アヴィ・ラーナーを筆頭に出演スターら関係者は言うと思うんですよ。

★消耗品映画は祭り映画!
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 そんなミレニアム・フィルムズの姿勢を満天下に示したのが、「エクスペンダブルズ」(2010年)。直訳すると、ずばり“消耗品”。スタローンを筆頭に“見捨ての消耗品”アクションに出演してきたスターをずらりと揃え、爆発、銃撃、友情という純度100%の男の世界を全編で展開させ、全世界で大ヒット!
 なんとこの映画でスタローンは5つの年代で主演&脚本を務めた映画がアメリカ興業成績で1位を獲得した史上初めてのスターになったのです。批評家が何と言おうと、映画ファンの多くは“見捨ての消耗品”映画を愛しているのです。

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 その勢いに乗って、待望の続編「エクスペンダブルズ2」がいよいよ3月2日にリリースされます。正直ストーリーなんてあってないようなものですが、前作以上のアクションが全編に展開。消耗品スターたちが暴れているだけの映画です。でもそれがいいのです。公開当時、脳みそまで筋肉と揶揄されたものの今なお熱い支持を集めるシュワルツェネッガーの「コマンドー」(1985年)やスタローンの「ランボー/怒りの脱出」(1985年)のノリが21世紀に蘇えるんですから。しかも「その男ヴァン・ダム」で自虐ネタをするまで堕ちたジャン=クロード・ヴァンダムが久々にナルシスティックな演技を披露し、また伝説の“消耗品”スター、チャック・ノリスが「ありえねぇ~」って感じで登場するのです。

 もうねぇ、“見捨ての消耗品”映画で育った人間には盆と正月が一度に来たような“祭り映画”です。この楽しさ、この可笑しさが判らない人はこう言ってやりましょう。
「見捨て上等! 消耗品結構!」
 
それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年3月号)
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2013/03/01(金) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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