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“映画の星座盤”第70回「北のカナリアたち」「あなたへ」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★「卒業」のミセス・ロビンソンは何歳でしょう?
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 「卒業」(1967年)って映画がありますよね。そう、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」が流れる、あの映画ですよ。
 お話をかいつまんで説明しますと、こんな感じ。

 大学を優秀な成績で卒業したばかりのベン君は無気力。自分は何がしたいのか判らないのです。そんな彼は隣人のロビンソン夫人に誘惑されます。童貞だったベン君は大人の女性の肉体に溺れる日々をおくります。そんなある日、ロビンソン夫人の娘エレーンが帰郷。両親からデートに誘えと無理強いされたベン君。ロビンソン夫人の手前、エレーンにひどいことをするのですが、その時、エレーンが流した涙にガーン! いっぺんでエレーンのことが好きになってしまいます。果たしてベン君の無茶苦茶な恋は成就するのでしょうか?

 本作で有名なのはクライマックスからエンディングにかけての展開です。公開当時、日本では本作のラストは清々しいハッピーエンドと評されましたが、アメリカでは違います。「人生、そんな甘いもんじゃないぞ」っていう皮肉を込めたビターなエンディングだと解釈されているんです。その論拠はラストのベン君とエレーンの表情なんですって。観る時はそこを注意してくださいね。
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 さて本作で無名の舞台俳優から一躍若手演技派として注目を集めたのはダスティン・ホフマンです。ホフマンはベン君を演じているのですが、撮影時、29歳。結構な大人です。これぐらい実年齢と役年齢が離れていると、下手な俳優だったら失笑ものですが、ホフマンは21歳の童貞青年にしか見えません。まさに驚異の演技です。

 「卒業」にはもうひとり、驚異の演技を披露した人がいます。それはロビンソン夫人を演じたアン・バンクロフト。映画では綺麗な40代の有閑マダムですが、実は彼女、撮影時の年齢は37歳。ホフマンとは8歳、娘のエレーン役のキャサリン・ロスとは11歳しか離れていないんです。いや、ほんと、俳優の演技って凄いですね。
 そんなアン・バンクロフトと真逆の立ち位置で俳優の演技の凄さを見せつける女優が日本にいます。その人の名は、吉永小百合さん!

★現代世界映画界において唯一無比な女優、吉永小百合
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 吉永小百合さんの凄いところは、1945年生まれという実年齢より大きく見積もって30歳以上若い役を演じても、あまり違和感を覚えさせないことです。舞台なら実年齢よりも若い役を演じた女優はたくさんいます。森光子の『放浪記』とか杉村春子の『欲望という名の電車』とかですね。でも映画で実年齢よりはるかに若い役を演じ続けられるのは古今東西、吉永小百合さんしかいません。

 5/10リリースの「北のカナリアたち」(2012年)もそうです。この映画の小百合さんの役どころは元教師の過去を持つ図書館司書。定年退職を迎えた日に起こった事件をきっかけに20年前、悲しい別れをした教え子たちを訪ねて回るってお話なのですが、小百合さんは定年を迎えた現在と、20年前の過去を演じます。しかもよく見ると、小百合さんは実年齢に近い現在を老け役として演じているんです。つまり女優・小百合さんにとって、現在は40代で、60代は未来なのです。普通、考えたら、ありえない役柄です。67歳の女性が40代の熟女を演じるなんてね。

 おまけに40代を演じる67歳(撮影当時)の小百合さんの夫役は6歳下の柴田恭平、父親役は7歳上の里見浩太郎、そして不倫相手は20歳下の仲村トオルなんです。おまけにトオル君とは濃厚なキスまでしちゃうんですよ。文で読むとギャグにしか思えないかもしれませんが、映画を見ると親子ほど年の離れたトオル君とそんなことをしても妙に納得させられちゃうから不思議です。

 実際、ここ10年程、小百合さんの相手役は年下ばかり。「母べえ」(2008年)なんて、28歳下の浅野忠信が小百合さんに惹かれてしまうのですが(横にずっと若い壇れいがいるのにですよ)、そんな無理な展開になっても観客に疑問を感じさせないのです。こんなこと、かのメリル・ストリープでも無理でしょう!

 洋の東西を問わず、多くの女優が敗北した“年齢”という強敵をさらりと凌駕してしまった吉永小百合という女優。まさに現代の世界の映画界において唯一無比な存在と言えるのではないでしょうか? 恐るべし、吉永小百合の演技!

 実は日本の男優にもいるのですね、小百合さんと同じように相手役との年齢差が大きいスターが!その人の名は高倉健。

★健さんの奥さんは何歳でしょう?
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 70~80年代、健さんの相手役の女優の最年長は10歳下の倍賞千恵子、最年少は17歳下のいしだあゆみで、実際の夫婦にもいそうな年齢差でした。それが変わったのは「鉄道員」(1999年)から。この時、妻役を演じた大竹しのぶと健さんの年の差は26歳、続く「ホタル」(2001年)、そして3/22リリース「あなたへ」(2012年)の妻役の田中裕子は24歳差と、親子ほど年が離れている女優が続いています。
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 で、年の差夫婦って設定なら分かるんですが、例えば「あなたへ」の田中裕子は映画を見るかぎり「卒業」のアン・バンクロフトと同じく実年齢よりもかなり上の役を演じているように見えます。そう、小百合さんの相手役の逆です。正直、そんなことするなら、千恵子さんの年齢の女優を使えばいいのにって思うんですよ、私。それなのにどうして健さんは小百合さんと同じく年齢差が大きい人を相手役に選ぶんでしょうね?

 ひょっとすると健さんは一つ違いのクリント・イーストウッドに対抗意識を燃やしているのかもしれません。イーストウッドの奥さんは35歳下ですからね。ひょっとしたら次の健さんの映画の奥さんを35歳下の安田成美とか江角マキコがやるかもしれません(んな、わけないか…)。

それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年4月号)
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2013/04/12(金) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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