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“映画の星座盤”第72回「PARKER/パーカー」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★“ビールなスター”って何?
 その主演作が劇場よりもレンタル市場で大ヒットするスターっていますよね。そういう人って昔からアクション映画のスターに多いんです。
 1980年代だったらチャック・ノリス、90年代だったらジャン・クロード・ヴァンダムスティーブン・セガール。最近ではジャッキー・チェンジェット・リードニー・イェンら香港組もこのグループですし、かつての大スター、メル・ギブソンニコラス・ケイジなんかもそうですよね。
 彼らに共通しているのは、「ヤツの映画なら何でも観る!」っていう熱心なファンがいるってことです。但し、“家でビール片手に”っていう条件付きですけど…。
 現在、そんなビールのお供に最適なスター、名付けて“ビールなスター”(勝手に命名)のチャンピオンと言えば、ジェイソン・ステイサムでしょう。

★“良いひと”ジェイソン・ステイサム
 2011~13年にかけて日本で公開されたステイサム出演作は7本。でも助演だった「エクスペンダブルズ2」(2012年)以外は、知らぬ間に公開が始まって、知らぬ間に公開が終わるというまさに“エクスペンダブルズ(消耗品)”状態。

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 そんなステイサムですが、“ビールなスター”の先輩たちとまるで違うところがあるんですよ。そもそも“ビールなスター”って基本的には「カッコ良いオレを見ろ!」「映画で目立つのは俺だけでいい!」っていうスターのエゴの塊みたいなところがあるんです。正直最近のヴァンダムやセガールの主演映画なんかエゴしかないって感じがします。だから相手役の女優は勿論、敵役も自分より格下の俳優をキャスティングして、自分が食われないようにしちゃうんですよ。そうなんです、“ビールなスター”っていうのはチームプレイが出来ないというか、最初からする気がないんですね。

 ところがステイサムは違います。男優であれ、女優であれ、相手を立てなければいけない場合には、ちゃんと立てるんです。例えば「エクスペンダブルズ」(2010年)。 先輩のスタローンを食おうなんてこれっぽっちも考えずに100%完璧な相棒に徹しましたし、「キラーエリート」(2011年)ではクライヴ・オーウェンと見せ場を分かち合い、ロバート・デ・ニーロから芝居を仕掛けられても無理に熱演をしようとはしませんでした。

 どうしてステイサムはここまで共演者に気を使うのでしょうか? それはどうやら前歴にあるようです。実はステイサムは若い時、水泳の飛込み競技のイギリス代表チームの選手だったのです。スポーツの世界では選手がエゴを捨て、チーム一丸とならなくては勝つことが出来ません。
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 多分、ステイサムはこの精神を忘れていないからこそ「エクスペンダブルズ2」に出演したのだと思います。だって一作目は配役順の第二位だったのに、二作目ではスタローン、シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ヴァンダム、そしてチャック・ノリスら先輩の影に隠れて目立たなくなることは最初から判り切っているんですよ。ステイサムに一人前のスターとして何の得もない仕事なんですから、降板しても何の不思議もありません。にもかかわらず出演したのは自分が出ないなんて言うと、映画について変な憶測が起きて迷惑がかかるかもしれないと考えたんじゃないですかね。

 作品のために自我を抑える能力。これはステイサムが水泳選手を引退した後のモデル業でより強くなったと思います。だってモデルの第一の目的と言えば商品をカッコ良く見せること。モデル自身ではありません。ステイサムにとって、ある映画やあるシーンで重要なのが自分ではなく共演者だった場合、自分が一歩も二歩も引くことに何の抵抗も感じないのでしょう。
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 その良い例が「トランスポーター」シリーズ(2001、05、08年)。同じカーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズでは車はただの道具でしたが、「トランスポーター」シリーズでは車はステイサムと同格の存在になっていましたよね。

★悪党パーカー登場!
 そんなステイサムの最新主演作は「PARKER/パーカー」(2013年)。リチャード・スタークが1962年から40年以上に渡って書き続けてきた犯罪小説『悪党パーカー』シリーズの一篇『地獄の分け前』の映画化です。
Nick-Nolte,Jason-Statham Jennifer-Lopez,Jason-Statha

 当然、ステイサムが演じるのは悪党パーカーです。このパーカー、日本ではあまり知られていませんが、アメリカとフランスでは根強い人気を誇り、計7回映画化されています。特にシリーズ第一作『人狩り』は1967年にリー・マーヴィン主演で「殺しの分け前/ポイント・ブランク」、1999年にメル・ギブソン主演で「ペイバック」と二度映画化されているほどの人気ぶり。
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 けれどもこれまでの映画化作品では“パーカー”というキャラクター名が使われていませんでした。なんでも原作者スタークがイメージの固定化を恐れて許可しなかったそうです。それが今回初めて認められたのです。日本に数えるほどしかいないであろう私のような『悪党パーカー』ファンにとってこんな嬉しいことはないでしょう。しかもステイサムの風貌は原作に記されたパーカーの外見にドンピシャなんです。期待が高まります。

 で、出来あがった作品にはびっくり! 前半は原作のテイスト通り、ハードでクールな男の犯罪映画なのですが、ジェニファー・ロペスが物語に絡みだす中盤以降は、彼女が主演の巻き込まれ型サスペンス・コメディになるのです。

 この大胆な脚色の是非は原作ファンの私にはかなり難しゅうございます。映画単体で見れば充分満足ですが、原作ファンとしては「こんなの悪党パーカーじゃないやい」って言いたくなりますし…、ステイサムは悪党パーカーにぴったりなんですけどね~。

 そこで原作シリーズを知っている人も知らない人も本作をご覧になって、良かったらその是非を私に教えてください。是とされるか非とされるかは判りませんが、ただ共演者を立てるステイサムの人柄の良さはきっと誰もが感じるはずです(?)

それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年6月号)
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2013/06/01(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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