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“映画の星座盤”第73回ジョセフ&ブルース主演「LOOPER/ルーパー」!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

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 今月ご紹介するのはジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィリス主演の「LOOPER/ルーパー」 (2012年)。
 全米の批評家に絶賛され、各地の批評家協会賞で脚本賞を受賞した先読み不可能な物語が眼目の作品だから、出来る限り作品情報を得ずに観るのがオススメ。とは言え、情報がまったくゼロだと、見落としてしまうところもなきにしもあらず。そこで物語の内容には出来るだけ触れずにいくつかの注目ポイントを解説させてもらいます。

★一石二鳥の2044年カンザス

 近未来のアメリカって聞くと大概の人は「ブレードランナー」(1982年)の2019年のロスを思い浮かべませんか?イルミネーションを瞬かせる巨大ビルと、炎をあげる工場の煙突の間を空飛ぶ車がすり抜けていく…、アレです。

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 その影響は大きくて、以降のSF映画はすべてこのイメージなんですね。あのスティーブン・スピルバーグリュック・ベッソンですら「マイノリティ・リポート」(2002年)や「フィフス・エレメント」(1997年)で「ブレードランナー」の呪縛から逃れることが出来ませんでした。大監督がこの有様なのですから、その他の監督が描く近未来は推して知るべし。誰も観たことのない末来世界なんて今後、登場しないんだろうなぁ~と思ってしまいます。
 実際、数あるSF映画の中でオリジナリティがある末来世界だな~と誰もが思えるのは「ブレードランナー」と1968年に公開され、映画の舞台でさえ今となっては過去になっているスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」だけじゃないですかね。

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 「LOOPER/ルーパー」の監督&脚本のライアン・ジョンソンが物語の舞台に選んだのは2044年のアメリカ。
「また、ブレードランナーみたいな末来都市が舞台?」
「何回目?」
そう思いますよね。

 ところがどっこい、ジョンソンは只者じゃないんです。なんと場所をロスやニューヨークみたいな都会ではなく、中西部のカンザスにしました。ここは「オズの魔法使」 (1939年)の舞台になったところです。あの映画をご覧になった方は覚えているでしょう、カンザスがどれほど田舎だったか?地平線の彼方までトウモロコシ畑や牧草地が続いています。多分、ジョンソン監督はこの風景はこの先も変わらないだろうし、それに違和感を覚える観客もいないだろうと思ったんでしょうね。しかも現在と変わらないんだから、未来社会を描くための美術やCGの予算も抑えられて一石二鳥。

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 かくて「LOOPER/ルーパー」の未来社会は「ブレードランナー」を思い起こさせる凡百なものでなく、現在と変わらないというまさに、誰も見たことのなく、それでいてリアリティあるものになっています。いやぁ~、ジョンソン監督、あんたは偉い!

★二人一役の2044年カンザス

 「LOOPER/ルーパー」の物語のキーになるのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィリスが同一人物を演じること。どういうことかって言うとゴードン=レヴィットが年を取ったらブルースになるって訳なんです。けれども皆さんも薄々感づいているでしょうけど、ブルースはどんな役を演じてもブルース。特に最近はそうです。当然、今回に限り、ゴードン=レヴィットと共同でひとりの人物像を表現するなんてことをするはずもありません。大変なのはゴードン=レヴィット君です。自分がブルースの若い時だってことを観客に信じさせなければならないのですから。そもそもこの二人、全く似ていないんですよ。まさにミッション・インポッシブル!

 ゴードン=レヴィット君は頑張りました。目元と鼻筋に特殊メイクを施し、外見をブルースに近づけました。続いて表情。ブルースの芝居って目と口に特徴があるんです。世の中を斜に眺めているようなクールな眼差しと、常に不満げに尖らがした“スネオ口”です。
ジョセフ=ゴードン君の形態模写に陥らぬブルースの表情のコピーにはとにかく注目してご覧ください。そうすれば中盤のジョセフ=ゴードンからブルースへの変化が自然に行われるシーンには感動すら覚えるはず。

 ゴードン=レヴィット君に比べて楽をしているようなブルースですが、彼でなければ成立しないシーンがあります。そこでゴードン=レヴィット君に「そもそも論」とも言うべき“ある疑問”をぶつけられるのですが、その時のブルースの演技は見ものですよ。この時、ブルースは後で考えたら納得いかない答えを言うんですけど、その場では妙に説得力があるんです。まさに「有無を言わせない」って感じの演技なんですよ、ブルースは。

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 そうそう同じ時期に「クラウド アトラス」(2012年)って映画が公開されているんですが、こちらは「LOOPER/ルーパー」と違い、トム・ハンクスハル・ベリーら13人の俳優が凝ったメイクで人種・性別を越えて一人で何役も演じるのです。
 トム・ハンクスはどの役でも彼って判りますが、ヒュー・グラントが演じたすべての役は 一度観ただけでは絶対に判りませんよ。エンド ・クレジットで種明かしをするのでお楽しみに 。

★何でもアリの2044年カンザス

 「LOOPER/ルーパー」は様々なヒット映画のアイディアを組み合わせて作られています。 でもかなりひねった換骨奪胎がなされているので、元ネタを当てることは映画ファンにとって、ちょっとした映画検定試験になるかもしれません。この辺りがアメリカでの脚本の高評価の要因ではないかと思います。我こそはと思う方は、是非、挑戦してみてくださいね。

 そうそう、忘れるところでした。中盤でエミリー・ブラントが演じるヒロインのある行動にご注目。あまりに唐突なので、「えっ!?」って笑っちゃうぐらいびっくりしますよ。ある意味、ここが先読み不能の本作を象徴する名(迷?)場面かもしれません。何が起きるかは観てのお楽しみ!

それでは、また来月!

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年7月号)
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2013/07/01(月) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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