FC2ブログ

“映画の星座盤”第75回最終回!娯楽映画の極意“冒頭15分の三つの提示”

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★今回で連載75回。キリがいいので…。
 「映画の星座盤」は今回で連載75回を迎えました。年数に直すと6年とちょっと。書き始めた時はこんなに長い間、続くとは思ってはいませんでした。それもこれも読者の皆様のおかげです。ご愛読本当にありがとうございます。
 で、いきなりですが、『シネマ倶楽部』リニューアルにより、「映画の星座盤」は今回が最終回となりました。何事にも終わりがあるものでして…。
 最終回は、「面白い映画とつまらない映画は冒頭15分で決まる」と題して、ハリウッド娯楽映画の隠された作劇術について書いてみることにします。

★低予算映画の帝王の名言
RCorman.jpg RCorman2.jpg

 ハリウッドの映画人にロジャー・コーマンという人がいます。この人は1950年代からずっと活動を続けており、「100本の映画を作り10セントも損しなかった」と豪語する伝説のプロデューサー兼監督です。彼は多くの映画人にキャリアのスタートの機会を与えて来ました。どういう人がいるかっていうと、これがスゴイんです。『ゴッドファーザー』(1972年)のフランシス・フォード・コッポラ『ペーパームーン』(1973年)のピーター・ボグダノヴィッチ『タクシードライバー』(1976年)のマーティン・スコセッシ『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年)のロン・ハワード『羊たちの沈黙』(1991年)のジョナサン・デミ『アバター』(2009年)のジェームズ・キャメロン。どうです、アカデミー賞受賞者や大ヒットメーカーばかりでしょ。

godfather_poster.jpg FCoppola.jpg

papermoon_poster.jpg PBogdanovich.jpg

taxidriver_poster.jpg MScorsese.jpg

DaVinciCode_poster.jpg RHoward.jpg

SilenceoftheLambs_poster.jpg JDemme.jpg

Avatar_poster.jpg JCameron.jpg

 で、この中の一人、マーティン・スコセッシが商業映画デビュー作をコーマンのプロデュースで作った時、コーマンからこう言われたそうです。

「映画の冒頭15分をとてもうまく撮ることだ。観客は何が始まるか知りたがっているからね。ここで観客を引き込まないと映画は失敗だ」

 15分と言えば、NHKの朝の連続TV小説の一話分、また一般的なTVドラマの最初のコマーシャル・タイムまでの時間です。そう考えると15分が如何に大切か判るでしょう?
 コーマンのプロデュースした映画は全て低予算で、正直言って「何だ、これは?」って驚くようなチープな映画が多いのですが、彼が言う「冒頭15分が勝負」という考えはハリウッド娯楽映画の極意なのです。

★派手な見せ場を冒頭15分に!
IndianaJones_poster.jpg

 予算があろうがなかろうが、最初の15分に見せ場を用意するのが娯楽映画の鉄則の一つです。例えば『007』シリーズや『インディ・ジョーンズ』シリーズのような大作の場合は大掛かりな見せ場で、中&低予算のアクションやホラーの場合は銃撃戦やショック&ミステリアスな衝撃シーンで物語の幕が開きます。この時、観客の多くは最初がコレなんだから、クライマックスにはもっとスゴイものが観られるに違いないと期待します。当然、コーマンは先程の言葉の後に、こう言っています。

「クライマックスにも力を入れなくてはいけない。観客は、どんなふうにすべてがおさまるのか知りたがっているから」
 コーマンの言葉は真理です。しかもクライマックスにかける力は絶対に冒頭15分を超えなければなりません。それが出来なかったら観客の期待を裏切ることになってしまいます。実際、『007』シリーズにしろ、『インディ・ジョーンズ』シリーズにしろ、そんな失敗を犯して、面白くないと言われる作品はありますね。

★冒頭15分で描かなくてはならないもの
 一方で、冒頭15分に見せ場があるし、クライマックスにはそれ以上の見せ場も用意されているのに面白くないっていう映画もありますよね。そういう映画って大掛かりなアクションばかりに気を取られて、それよりももっと重要な“15分の三つの提示”を疎かにしているのです。その三つの提示とは、

①誰が主人公で、誰が仇役か
②主人公はどういうキャラクターなのか
③主人公の目的は何で、ジャンルは何


 これらは旅行ガイドのようなもの。①と②は同行者、③は行き先と乗り物の種類と考えてください。どこに行くか、何に乗るか判らない旅行ってしたくないでしょ? これが判れば、あとは安心して旅を楽しむことが出来るという訳です。

 例えばブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』(1988年)の場合、

①主人公は別居中の妻に会うためにL.A.にやってきたN.Y.の刑事マクレーン。仇役は武装テロリスト。
②マクレーンは妻に未練たっぷりの普通のおっさん。高所恐怖症。
③武装テロリストから妻を守り切るアクション。

DieHard_poster.jpg DieHard5_poster.jpg

 このように三つの提示を冒頭の15分で描き切っています。試しにシリーズ最新作『ダイ・ハード ラスト・デイ』(2013年)と“15分の三つの提示”を意識しながら見比べてください。『ダイ・ハード』が何度観ても面白い理由が実感として判りますよ。

★それでも面白くない映画はある
 残念ながら“15分の三つの提示”がちゃんと行われているのに面白くない映画があります。理由は二つあります。
 
 一つは②に興味が持てない場合。ドラマや恋愛、コメディに起きがちです。これらのジャンルは主人公のキャラクターに反感や嫌悪を覚えた時点でアウトです。しかもその感情は個人差があり、作り手ではどうする事も出来ません。まさに人それぞれってヤツです。
 もうひとつは③に新味がない場合。これはアクション映画やホラー映画、サスペンス映画が起こりやすい問題です。「前も観たなぁ~、こういうの」って、アレです。

 さていかがだったでしょう。映画は冒頭15分で観客の興味を惹けるかどうかか鍵なのです。今後、映画を観る時は“冒頭15分の三つの提示”を少しでも意識して貰えたら嬉しいです。

それではまたいつか、どこかで。

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年9月号)
スポンサーサイト



2013/09/01(日) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

トラックバック

トラックバックURL
http://cinemanc.blog.fc2.com/tb.php/478-656beaf8
 |  HOME  |