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“映画の星座盤”第9回「デス・プルーフ」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★グラインドハウスとは…。

DeathProof_poster.jpg

 今月、星座をお作りするのは「デス・プルーフ」(2007年)。「レザボア・ドッグス」(1992年)、「キル・ビル Vol.1&2」(2003&2004年)などで知られるクエンティン・タランティーノ監督の新作です。

ReservoirDogs_poster.jpg KillBill_poster.jpg

 劇場公開時は「デス・プルーフ IN グラインドハウス」というタイトルでしたが、そもそも“グラインドハウス”とは、アクション&エロ満載の低予算映画を2~3本立てで上映していた場末映画館を指す言葉。日本にもビデオ・レンタルが一般化する前の70~80年代にはこういう映画館がたくさん、ありましたね~。今でも東京なら浅草、大阪なら通天閣の下や飛田辺りには残ってますけど。タランティーノは映画少年&青年の頃、そういう映画館に通いつめて浴びるように低予算映画を観たんでしょう。それで映画監督として一家を成した今、その頃、自分が感じた低予算映画の面白さを多くの人に体験させようと考えて作ったのが本作です。

 耐死“デス・プルーフ”仕様の大型アメ車を駆る殺人スタントマンと2組の美女たちの戦いという単純な物語に、“カーアクション映画”を初めとする70年代の低予算映画への汲めども尽きぬ愛を注ぎ込んでいます。ですから、本作をより楽しむためには、事前にその頃の映画を何本か観ておくことをお奨めします。

★タランティーノが愛する70年代カーアクション

VanishingPoint_poster.jpg

 まずは「バニシング・ポイント」(1971年)。これはコロラド→サンフランシスコ間を24時間で走破する賭けに挑み、追いすがるパトカーを振り切る“明日なき暴走”を行う陸送屋ドライバーを描いた作品です。主人公が運転するのは、70年代型白のダッチ・チャレンジャーという大型車。雄大なアメリカのフリーウェイを白い駿馬の如く爆走するダッチ・チャレンジャーの雄姿は、当時の観客に強烈な印象を与えました。その人気は今も衰えず、数年前にはミニカーが発売されたほどです。

 「デス・プルーフ」の劇中に、この70年代型白のダッチ・チャージャーにたいへんな愛着を示す女性たちが登場します。「バニシング・ポイント」を観ておくと、彼女たちの思い入れに「わかる、わかるぞ~、その気持ち」と共感を覚え、その後に繰り広げられる豪快なアクションに新鮮さとノスタルジーを感じることが出来ます。

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 同様に、70年代のカーアクションとして、ピーター・フォンダ主演の「ダーティメリー クレイジーラリー」(1974年)とH・B・ハリツキー監督・主演の「バニシング IN 60」(1974年)を事前チェックしておいた方が良いかもしれません。「デス・プルーフ」の後半で悪役“スタントマン・マイク”が運転するのは、「ダーティメリー クレイジーラリー」で激走するダッチ・チャージャーですし、前述の「バニシング・ポイント」LOVEの女性たちが最初に乗っていた車は「バニシング IN 60」で大活躍するムスタング・マッハ1とカラーリングまで同じなのです。そう言えば、「ダーティメリー クレイジーラリー」はタランティーノの旧作「ジャッキー・ブラウン」(1997年)にもテレビ番組としてチョイと登場していましたね(見ているのはピーター・フォンダの娘、ブリジットっていう楽屋落ち!)。どちらの作品もレンタル店にあるのはビデオのみなのが、残念です…。

JACKIEBROWN_poster.jpg Convoy_poster.jpg

 そうそう、劇中で悪役“スタントマン・マイク”の愛車に付いている巨悪な顔のアヒルの飾りがやたらにアップになりますが、あれにも意味があるんです。元ネタは伝説の鬼才サム・ペキンパーが監督した大型トラック・アクション「コンボイ」(1978年)という映画。その中でラバーダックという主人公が運転する16輪トラックの車体の飾りがあれとそっくりなのです。この「コンボイ」という映画、アメリカではトラック野郎に人気があって、あの飾りは一般販売もされているそうです。

★タランティーノが山の如く引用する映画たち


Telephone_poster.jpg BlowOut_poster.jpg

 この他にも「デス・プルーフ」には山の如く、70~80年代のアクション映画やサスペンス映画からの引用があります。映画の前半で話題になる“合言葉”が、チャールズ・ブロンソン主演のスパイもの「テレフォン」(1977年)から取られているとか、メールを打つヒロインのバックに流れる甘い音楽はジョン・トラボルタ主演のサスペンス「ミッドナイト・クロス」(1981年)の“愛のテーマ”だとか、もっともっと紹介したいのですが、そんなことをしたら、それこそタランティーノ・クラスの“映画バカ”じゃない限り、ついていけないクラスに突入してしまいます。残念ながら、この辺りで打ち止めとさせていただきます。自他共に認める“映画バカ”の皆さんは、タランティーノが作品に盛り込んだ“思い入れ”の数々をご自身の目で探してください。見つけた時は、「おいおい、タラちゃん、そんなの普通の映画ファンにはわからないよ」といニヤニヤしながら、優越感に浸れますよ。

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 そうそう、最後にキャストについて一言。映画の前半に登場する3人娘のうち、2人は懐かしの映画スターの娘さんです。まず、ジャングル・ジュリアを演じているシドニー・ターミア・ポワチエは、「夜の大捜査線」(1967年)で知られる最初の黒人スター、シドニー・ポワチエと、「冒険者たち」(1967年)で日本でも人気のあったジョアンナ・シムカスの娘です。

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 次に、金髪のシャナを演じるジョーダン・ラッドは、TV版「チャーリーズ・エンジェル」のエンジェルの一人で、日本のCMにも登場したシェリル・ラッドの娘です。オールド・ファンには感慨深いものがありますねー。

夜空の星のごとく無数に輝く映画。そのいくつかを繋げていき、星座を作り上げるのが映画ファンの楽しみ。今月の星座はいかがでしたか?

それでは、また来月。

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2008年3月号)
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2008/03/01(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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