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“映画の星座盤”第23回「デス・レース2000」再映画化への道

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★カルト映画「デス・レース2000」とは?

「西暦2000年、独裁国家となったアメリカ。国民が熱狂するのは史上最も過激なレース“デスレース”だ。ロサンゼルスからニューヨークまでの大陸横断5000キロを、完全武装のカスタムカーを駆るレーサーたちが互いに殺し合う死のレース。走行中は速度無制限、交通放棄完全無視、しかも途中で一般人を轢き殺せばバーナス・ポイントが加算されていく。そう、ただ、速いからといって勝利の杯を獲ることは出来ない。レーサーは冷酷非情でなければならない、まさに地獄のレースなのだ!」

 これは1975年に全米で公開された「デス・レース2000」の設定です。どうです、イカしてるっていうか、無茶苦茶アナーキーでしょ。実際、映画の中ではこの設定の通り、子どもや病人、老人までも轢いて轢いて轢きまくります。悪趣味!非道徳!もちろん、言われなくてもわかってますって。実際、この映画の設定を忠実に再現したTVゲームが1976年に発売されたのですが、教育上よろしくないというクレームが殺到して、即座に発売中止になっています。

 でもね、この映画、1970年代に映画少年だった人間には決して忘れることの出来ない思い出の“B級映画”なのです。いまだに私の周りの“40代の映画少年”の間ではこの映画の話で盛り上がります。みんな10代の頃に観ているんですね。

 で、この映画のどこをネタにするのかっていうと、オープニング。劇中に出てくるカスタムカーのイラストがタイトルバックに出るんですけど、これが小学生の落書きかってぐらいの下手さなんです。多分、映画史上最もチープなタイトルバックじゃないでしょうか。でね、誰もが思うわけですよ。「イラストはまぁ、監督が自分の息子に書かせたイラストで、ちょっとしたシャレだろう。実際、画面に出てくるカスタムカーはものすごくカッコいいものに違いない」ってね。でも残念。本編が始まって登場してくるカスタムカーは、東映の戦隊ものの乗り物がスーパーカーに思えるくらいチャチなものばかり。そのあまりにダサいデザインは本当、一見の価値があります。そして「ロッキー」(1976年)でブレイク前のシルヴェスター・スタローンの悪役演技。今のスタローンからは想像も出来ない演技は爆笑を呼びますね。

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★トムよ、あんたも仲間だったか!

 こう書いてくると、何かとんでもない映画のようですけど、違うんですね。確かに安っぽい映画なんですけど、何ていうか、全編に小学6年生か中学1年生の男子のメンタリティが詰まっていて、男性なら何とも言えない幸せな気分になってくるんです。だっておもちゃのような乗り物でアナーキーに走り回るって、男性なら一度や二度は想像したことあると思うんですけど、そんな夢を具現化してるんですよ、この映画。

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 だからいまだに一部で語られているわけで、本作のファンは日本だけでなくアメリカにもたくさんいるんです。例えば、その一人に世界の大スター、トム・クルーズがいます。なんと、彼は本作の権利を獲得し、2002年には自らの製作会社で本作の再映画化作品「デス・レース3000年」を企画したほどなんです。このニュースを知った時、私はトムにすっごい親近感を覚えましたね、「トムよ、あんたも仲間だったか!」ってね。

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 でも残念ながら、この企画は実現しなかったんです。何でもトムは「沈黙の戦艦」(1992年)のJ・F・ロートンなどに脚本を依頼したんですけど、その仕上がりに満足出来なかったんですって。で、製作が延び延びになっているうちに、例の奇行のおかげで長らくパートナーだったパラマウントから契約を破棄されてしまったんです。そのドタバタの中でトムは「デス・レース2000年」の権利を放棄、再映画化計画は暗礁に乗り上げてしまいました。

★アンダーソンが再映画化した「デス・レース」

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 そこに登場したのは、ポール・W・S・アンダーソン監督。「バイオハザード」(2001年)、「エイリアンVSプレデター」(2004年)など、いわゆる“オタク系イベント映画”で知られる人ですから、映画オタクからの熱い支持を集めるカルト映画の再映画化には打ってつけというわけで、トムに代わって映画化を推進します。

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 アンダーソン監督はトムが気に入らなかった脚本を破棄。一から脚本を書き直したのです。実はアンダーソン監督、年齢はトムと同じ40代半ばなのですが、映画を観始めたのは、大学に入った1980年代半ばから。だから10代の頃から映画少年だったトムのような「デス・レース2000」への思い入れはゼロ。どちらかと言うと80年代のSFアクションの方が好きなんです。だから改変に躊躇はありません。

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 で、アンダーソン監督がどう改変したかって言うと、まずデス・レースを大陸横断から重犯罪者専門の刑務所内で行うようにしました。これは80年代を代表するホラー映画の鬼才ジョン・カーペンターの代表作で、ニューヨークが刑務所になった世界を描く「ニューヨーク1997」(1981年)のパクリです。で、主人公はほとんどのカーペンター映画がそうであるように労働者階級にしました。次に悪役の設定や世界観はアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「バトルランナー」(1987年)を換骨奪胎しました。なし崩し的に大団円を迎えるクライマックスの展開はよく似ています。そして劇中に登場する車はオリジナルのような“チキチキマシン”ではなく、若き日のアンダーソンが衝撃を受けた「マッドマックス2」(1981年)に登場するような汚れ系に変更。そして全体のイメージを「グラディエーター」(2000年)のようにまとめたそうです(本人談)。

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 ここまで変えたら「デスレース」でも何でもないやないかと、オリジナルのファンは怒るかもしれません。しかしアンダーソンにしてみれば、オリジナルを好きなのは、70年代からの映画ファンである“40代の映画ファン”だけだし、オリジナルも恐ろしくチープな映画ですから、気にかける必要はないと思ったのかもしれませんね。

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 ところで、アンダーソンは「バイオハザード」の映画版で名を知らしめていましたが、実はその前に「モータル・コンバット」(1995年)を映画化していたり、「DOA/デッド・オア・アライブ」(2006年)を製作していたり、ゲームの映画化の第一人者なんです。当然、本作にもゲーム・テイストを盛り込んでいます。それは「マリオカート」!信じられないかもしれませんが、本当にやるんです。どこで「マリオカート」をするか。それは観てのお楽しみ!

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 夜空の星の如く無数に輝く映画。そのいくつかを星座のように繋げるのは映画ファンの楽しみ。今月の星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2009年5月号)
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2009/05/01(金) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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