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“映画の星座盤”第33回 SFと難病ラブロマンスが合体!「きみがぼくを見つけた日」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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 今月は「きみがぼくを見つけた日」(2009年)で星座盤を作ってみましょう。

★最初はブラッド・ピット主演だった?

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 原作は2003年に出版されたオードリー・ニッフェネガーのベストセラー小説『タイムトラベラーズ・ワイフ(原題:The Time Traveler's Wife)』。邦題から1億光年離れた、そのものずばりのタイトルです。

 この原作の映画化権を出版前に押さえたのはブラッド・ピットジェニファー・アニストン。当初結婚していた2人が夫婦共演作として考えて、かどうか定かではありませんが、ピットは「きみに読む物語」(2004年)を書いたジェレミー・レビンに脚本を発注。監督にはスティーヴン・スピルバーグデヴィッド・フィンチャーガス・ヴァン・サントといった有名監督に声をかけたそうです。ところが2005年にピットとアニストンが離婚。プロジェクトは座礁してしまいます。

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 そんな不幸な企画が復活したのは2007年のこと。製作会社はレビンの脚本の改稿を「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990年)でアカデミー賞を受賞したブルース・ジョエル・ルービンに依頼します。このルービンという人は、死後の世界や“人はどう死に向き合うか”とうことをテーマにした脚本を一貫して書き続けている人なんです。

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 このルービンの脚本を監督することになったのは、ドイツ出身のロベルト・シュベンケ。彼の監督作は、日本の刺青をネタにした猟奇スリラー「タトゥー」(2002年)と、観終わった時、多くの人が思わず「アラブの人に謝れ!」って突っ込みを入れた母ものサスペンス「フライトプラン」(2005年)。ラブロマンスとは無縁のキャリアの持ち主がどうして抜擢されたかは謎ですね。

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 監督が決まれば、いよいよキャスティングです。タイトルロールの“タイムトラベラーの妻”には「007/カジノ・ロワイヤル」(2006年)のエヴァ・グリーンが立候補したんですが、選ばれたのはレイチェル・マクアダムス「きみに読む物語」の主演女優です。相手役の“タイムトラベラー”には「ミュンヘン」(2005年)のエリック・バナ。何でも彼は以前からマクアダムスのファンで、彼女と共演できると聞いて、一も二もなく出演を承諾したそうです。

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 かくてタイムトラベラーの生活をリアルに描くSFと、感動の“死病もの”という2つが同時に楽しめる、1粒で2度おいしい作品が出来上がりました。ちょっぴり詳しく解説しましょう。

★艱難辛苦のタイムトラベラーの暮らし!

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 前半では“時間旅行能力”の大変さを具体的に描いていきます。「ターミネーター」(1984年)を思い出してください。時間旅行してきたシュワは素っ裸でしたね。そうなんです。本作のバナも身体だけが時間旅行してしまうのです。だから別の時間にやってきた彼が最初にすることは、服を手に入れること。どうやって服を手に入れるかって?もちろん、不法侵入して泥棒するんですよ。そのためにバナは警官に追われたり、変態に間違われたり、もう大変。しかも“時間旅行”をコントロールすることが出来ないんです。ちょっとでもストレスが溜まると、ピュンと別の時間に飛ばされちゃいます。映画の中では主人公はそんな暮らしを30年続けたって言ってますけど、正直よく生きてこられたなぁと思います。そんなちょっぴりコミカルなバナの苦労を観ていると、軽々しくタイムトラベラーになりたいなんて言えなくなります。

★エリック・バナの難病映画「ハルク」と一緒に観よう!

 閑話休題、「きみがぼくを見つけた日」は、そんな大変な日々を送るバナと子どもの時に出会ったマクアダムスの恋物語がロマンティックでかつコミカルに展開。ここで絶対に考えちゃいけないのは、どこでバナがマクアダムスを好きになったかってこと。それを気にし始めたら、“卵が先か、鶏が先か”と同じ“思考の無限ループ”に入ってしまいますから。

 中盤はタイムトラベラーが子どもを作るのがどんなに大変かってことが描かれます。なんと時間旅行の能力が子どもに伝染しちゃうんです。しかも能力は胎児の段階で発動し、子宮の中から時間の狭間に飛んでいっちゃうんです。そのためマクアダムスは何度も流産。果たして、2人は愛の結晶を得ることが出来るのでしょうか?この中盤はある意味、本編最大の見どころです。シリアスな問題をあっと驚く方法で解決するんですが、その深刻さとユーモアのバランスが絶妙なんですよ。

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 この辺りから映画はSF風味のロマンスから、「僕の初恋をキミに捧ぐ」(2009年)ばりの“涙の難病もの”に変貌します。タイムトラベルの能力が、癌とか白血病と同じ扱いになるんですね。まぁ、ここから先は観てのお楽しみということで詳しくは書きませんけど、ルービンさんの脚本らしい、“人はいかにして死と向き合うか”っていうテーマが全面に打ち出されていきます。彼が監督した「マイ・ライフ」(1993年)とも共通点が多いんです。

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 ちなみに本作の前にアン・リー監督の「ハルク」(2003年)を観ておくとちょぴり得した気分になれます。主演は同じエリック・バナ。この映画ではバナはストレスに見舞われると“緑の巨人”に変身してしまいます。私はこの2作を勝手に“エリック・バナの難病2部作”って名付けています。

★きみが“憎みきれないロクデナシ映画”を見つけた日

 正直、「きみがぼくを見つけた日」は、様々な要素が整理されていない作品です。でもそのなんとももったいない“出来損ない感”が妙に心に残るんです。まさに“憎みきれないロクデナシ”。皆さんもこの珍味を一度、ご賞味ください。

 夜空の星のごとく無数に輝く映画。そのいくつかを星座のように繋げるのは映画ファンの楽しみ。

 今月の星座はいかがでしたか? それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2010年3月号)
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2010/03/01(月) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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