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“映画の星座盤”第34回 エメリッヒ監督のディザスター映画「2012」はコメディである!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

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★返して、私の涙を返して!

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 世界中でヒットしたローランド・エメリッヒ監督作「2012」(2009年)。しかし本国アメリカでは酷評の雨嵐、日本でも某映画雑誌の2009年度ワースト映画にランクインしております。実際、私の周りにもネガティブな感想を持った人間が結構いまして…。
 当コーナーの編集担当のお姉さんなんか「後半の主人公たちの行動にイライラしちゃいました」とプンプンでしたし、義妹なんかは途中で感涙したのに、その後の唖然とするクライマックスを目の当たりにした時、「返して、私の涙を返して!」と思わず呟いたんですって。

 一方、私は「2012」が大好き。この映画へのどんな批判も体を張って守る気満々です。どこがそんなに好きかって?
 まずは映像!CG特撮が飽食の現代。少々の映像を見ても驚きもしなくなっていますが、本作は違います。抜群のカメラポジションで世界崩壊の地獄絵が3D映画ばりの立体感、奥行き感で迫ってくるんです。初めて「ターミネーター2」(1991年)や「ジュラシック・パーク」(1993年)を観た時、「CG特撮ってスっゲえっ」と感じた、あの気持ちが蘇るんです。もっともその凄さがDVDでどこまで伝わるのかって聞かれると、難しいコトなんですけど。

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 じゃあ、「2012」は劇場で観なければ、その良さが分からないのでしょうか?いいいえ、全然、大丈夫。“正しい観方”さえすれば十分に楽しめますし、評価できます。では“正しい観方”とは何なのか?そこで今回は「私が怖れることをやめて「2012」を愛することが出来た観方」をお話しします。

★「2012」はコメディである!

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 まず断言しておきましょう。「2012」は真面目なパニック大作ではありません。大掛かりな見せ場があるコメディなのです。ここは絶対に間違えてはいけません。

 たとえば劇中にこういう設定があります。人類滅亡を知ったG8は人類の種を残すために“ノアの方舟”みたいな巨大船を秘密裏に建造しようとするんですが、それをどこに頼んだと思います?中国ですよ、中国。機密保持は完璧かもしれませんけど、クオリティが…。その心配はズバリ的中。案の定、クライマックスではこの巨大船、ジャンパーひとつで扉が閉まらなくなって、えらいことになります。「2012」には、こんなギャグとしか思えない設定や展開があらゆるところにあるんです。

 コメディ映画の基本に「おかしなことは大真面目に描かなければ笑いが取れない」ってのがあるんですが、「2012」はまさにそれ。でも、監督&脚本のローランド・エメリッヒにはコメディを作っているという自覚は全くありません。つまり「2012」が生む笑いはエメリッヒの意図しないものなのです。

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 実は本作以外にも、作っている方は大真面目、観ている方は大笑いって映画がありました。アラン・ドロンと“エマニュエル夫人”ことシルビア・クリステルほかオールスター・キャストの「エアポート’80」(1979年)。超音速旅客機コンコルドを素材にした大型パニック映画なんですけど、登場人物たちのありえない行動とチープな特撮で描かれるありえない見せ場で、劇場では爆笑の嵐が起こってしまったのです。そのため映画会社はコメディとして宣伝し直した、という逸話が残されている珍品。事前にこれを観ておくと、心の準備が出来て「2012」がより楽しめること、確実です。実は私、こういう類の映画が大好きなんですよ。

★お前はすでに死んでいるじゃないか?驚異の定石崩し

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 「フライング・ハイ」(1980年)という映画があります。アメリカ映画協会が選ぶ“アメリカンコメディ・ベスト100”の第10位に選ばれたほどの作品です。中身は70年代に流行ったパニック映画の定石を徹底的にパロディ化した作品です。実は「2012」「フライング・ハイ」かって思えるぐらい、気持ちよく定石を崩していく映画なのです。

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 定石のひとつに、「ある設定を与えられた登場人物は劇中で命を落とす」というものがあります。その設定は俗に“死亡フラグ”と呼ばれています。例えば、戦争映画で兵士が「もうすぐ休暇なんだ」って言った時とか、離婚男が別れた家族に信頼できる保護者が現れたことを知った時に、ピコン!と立つのがそのフラグです。そうなると兵士は死を免れませんし、離婚男は我が身を犠牲にして家族を救わなければならなくなります。皆さんもそういう映画をこれまでにたくさん、観てきたでしょう?

 ところが「2012」は違います。主人公のジョン・キューザックには最低でも2度、“死亡フラグ”が立ちます。でも彼は死にません!かわりに“死亡フラグ”が立っていない人がどんどん死んでいきます。この定石崩しにはビックリです。さながら、「アルマゲドン」(1998年)でベン・アフレックが死んで、ブルース・ウィリスが無事に帰還するようなもの。冒頭で紹介した義妹が「涙を返して」と怒ったのはここなんですね。

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 さらにクライマックスには本作最大の定石崩しがあります。私はこんな段取りのクライマックスを観たことがありません。まさに空前絶後です。だって、本編最大の危機の原因を作るのが…、おっと、これから観る方のために詳しくは書けません。ご自身の眼で確認してください。編集部のお姉さん同様、イライラするかもしれませんが、私は万人に受けなければならない超大作でありながら、あえてこんな定石崩しを行ったエメリッヒの勇気を高く、高く評価したいと思う次第であります。

 夜空の星のごとく無数に輝く映画。そのいくつかを星座のように繋げるのは映画ファンの楽しみ。今月の星座はいかがでしたか?

 それでは、また来月!

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2010年4月号)
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2010/04/01(木) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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