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“映画の星座盤”第70回「北のカナリアたち」「あなたへ」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★「卒業」のミセス・ロビンソンは何歳でしょう?
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 「卒業」(1967年)って映画がありますよね。そう、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」が流れる、あの映画ですよ。
 お話をかいつまんで説明しますと、こんな感じ。

 大学を優秀な成績で卒業したばかりのベン君は無気力。自分は何がしたいのか判らないのです。そんな彼は隣人のロビンソン夫人に誘惑されます。童貞だったベン君は大人の女性の肉体に溺れる日々をおくります。そんなある日、ロビンソン夫人の娘エレーンが帰郷。両親からデートに誘えと無理強いされたベン君。ロビンソン夫人の手前、エレーンにひどいことをするのですが、その時、エレーンが流した涙にガーン! いっぺんでエレーンのことが好きになってしまいます。果たしてベン君の無茶苦茶な恋は成就するのでしょうか?

 本作で有名なのはクライマックスからエンディングにかけての展開です。公開当時、日本では本作のラストは清々しいハッピーエンドと評されましたが、アメリカでは違います。「人生、そんな甘いもんじゃないぞ」っていう皮肉を込めたビターなエンディングだと解釈されているんです。その論拠はラストのベン君とエレーンの表情なんですって。観る時はそこを注意してくださいね。
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 さて本作で無名の舞台俳優から一躍若手演技派として注目を集めたのはダスティン・ホフマンです。ホフマンはベン君を演じているのですが、撮影時、29歳。結構な大人です。これぐらい実年齢と役年齢が離れていると、下手な俳優だったら失笑ものですが、ホフマンは21歳の童貞青年にしか見えません。まさに驚異の演技です。

 「卒業」にはもうひとり、驚異の演技を披露した人がいます。それはロビンソン夫人を演じたアン・バンクロフト。映画では綺麗な40代の有閑マダムですが、実は彼女、撮影時の年齢は37歳。ホフマンとは8歳、娘のエレーン役のキャサリン・ロスとは11歳しか離れていないんです。いや、ほんと、俳優の演技って凄いですね。
 そんなアン・バンクロフトと真逆の立ち位置で俳優の演技の凄さを見せつける女優が日本にいます。その人の名は、吉永小百合さん!

★現代世界映画界において唯一無比な女優、吉永小百合
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 吉永小百合さんの凄いところは、1945年生まれという実年齢より大きく見積もって30歳以上若い役を演じても、あまり違和感を覚えさせないことです。舞台なら実年齢よりも若い役を演じた女優はたくさんいます。森光子の『放浪記』とか杉村春子の『欲望という名の電車』とかですね。でも映画で実年齢よりはるかに若い役を演じ続けられるのは古今東西、吉永小百合さんしかいません。

 5/10リリースの「北のカナリアたち」(2012年)もそうです。この映画の小百合さんの役どころは元教師の過去を持つ図書館司書。定年退職を迎えた日に起こった事件をきっかけに20年前、悲しい別れをした教え子たちを訪ねて回るってお話なのですが、小百合さんは定年を迎えた現在と、20年前の過去を演じます。しかもよく見ると、小百合さんは実年齢に近い現在を老け役として演じているんです。つまり女優・小百合さんにとって、現在は40代で、60代は未来なのです。普通、考えたら、ありえない役柄です。67歳の女性が40代の熟女を演じるなんてね。

 おまけに40代を演じる67歳(撮影当時)の小百合さんの夫役は6歳下の柴田恭平、父親役は7歳上の里見浩太郎、そして不倫相手は20歳下の仲村トオルなんです。おまけにトオル君とは濃厚なキスまでしちゃうんですよ。文で読むとギャグにしか思えないかもしれませんが、映画を見ると親子ほど年の離れたトオル君とそんなことをしても妙に納得させられちゃうから不思議です。

 実際、ここ10年程、小百合さんの相手役は年下ばかり。「母べえ」(2008年)なんて、28歳下の浅野忠信が小百合さんに惹かれてしまうのですが(横にずっと若い壇れいがいるのにですよ)、そんな無理な展開になっても観客に疑問を感じさせないのです。こんなこと、かのメリル・ストリープでも無理でしょう!

 洋の東西を問わず、多くの女優が敗北した“年齢”という強敵をさらりと凌駕してしまった吉永小百合という女優。まさに現代の世界の映画界において唯一無比な存在と言えるのではないでしょうか? 恐るべし、吉永小百合の演技!

 実は日本の男優にもいるのですね、小百合さんと同じように相手役との年齢差が大きいスターが!その人の名は高倉健。

★健さんの奥さんは何歳でしょう?
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 70~80年代、健さんの相手役の女優の最年長は10歳下の倍賞千恵子、最年少は17歳下のいしだあゆみで、実際の夫婦にもいそうな年齢差でした。それが変わったのは「鉄道員」(1999年)から。この時、妻役を演じた大竹しのぶと健さんの年の差は26歳、続く「ホタル」(2001年)、そして3/22リリース「あなたへ」(2012年)の妻役の田中裕子は24歳差と、親子ほど年が離れている女優が続いています。
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 で、年の差夫婦って設定なら分かるんですが、例えば「あなたへ」の田中裕子は映画を見るかぎり「卒業」のアン・バンクロフトと同じく実年齢よりもかなり上の役を演じているように見えます。そう、小百合さんの相手役の逆です。正直、そんなことするなら、千恵子さんの年齢の女優を使えばいいのにって思うんですよ、私。それなのにどうして健さんは小百合さんと同じく年齢差が大きい人を相手役に選ぶんでしょうね?

 ひょっとすると健さんは一つ違いのクリント・イーストウッドに対抗意識を燃やしているのかもしれません。イーストウッドの奥さんは35歳下ですからね。ひょっとしたら次の健さんの映画の奥さんを35歳下の安田成美とか江角マキコがやるかもしれません(んな、わけないか…)。

それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年4月号)

2013/04/12(金) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第69回「エクスペンダブルズ2」消耗品映画3/2発売!

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★その昔、東映に電話をすると…
トゥルル~、トゥルル~、トゥルル~、ガチャ
「はい、男の東映です」
 1960年代半ばから1970年代半ば頃まで、映画会社の東映に電話した人が最初に聞く第一声がこうだったそうです。電話していきなりこんな事、言われたらビックリしますよね~。でも当時の人はみんな、普通に受けいれていたそうです。どうしてかって?だって当時の東映はまさに“男の世界”、英語で言ったら“MANDOM”だったんですもの。

 今でこそ、東映って言ったら、戦隊もの&仮面ライダーなど変身ヒーローものか「プリキュア」シリーズなんかのアニメを作っている映画会社って印象ですけど、当時は違いました。
 東西の両横綱として鶴田浩二と高倉健が君臨し、大関クラスには菅原文太に若山富三郎、その下には千葉真一、松方弘樹、梅宮辰夫、大木実、待田京介、渡瀬恒彦など錚々たる男優陣がずらりと専属俳優として活躍していたのです。そしてこのメンツをそれこそ、麻雀の牌のように組み合わせ、“やくざ映画”を初めとする男性のみをターゲットにした映画を量産していたのです。

 量産ってどれぐらいだと思います? 今でも映画は大コケしない限り、最低ひと月は公開するでしょう。当時は大体2週間。それも2本立て。毎年40~50本、そんな男性しか面白がれない映画をベルトコンベヤー式に作り続けていたのです。

 当然、劇場は野郎ばっかりです。で、そんな野郎を出迎えるのが、映画館の壁にずらりと張られた専属男性スターたちのポートレート。これが笑っているのが少ないんですよ。精々、千葉真一か松方弘樹ぐらい私も子供の頃、春と夏に公開される“東映まんがまつり”で東映の映画館に行く度に、この“男の壁”を目撃しましたが、そりゃあ、理解不能でしたよ。「なんでおっさんの写真ばっかりなんやろか?」って。
 作っている映画もそれを上映する映画館もこんな調子でしたら、「男の東映です!」っていきなり言われても、当時は誰も変に思わなかったのも判るでしょ。
 
★ハリウッドにもある“男”の映画会社
 その昔の東映はまさに“男による男のための男の映画会社”だったんですが、現代のハリウッドには同じような映画会社があるのです。
 その名はミレニアム・フィルムズ
 イスラエル出身のアヴィ・ラーナーというプロデューサーが主催するプロダクションです。作る映画は東映同様、男性客をターゲットにしたアクション、サスペンス、ホラー。中でもアクションとサスペンスが得意中の得意。だって出演するスターの面子が凄いんですもの。
 シルベスター・スタローン、ブルース・ウィリス、ニコラス・ケイジ、ジェイソン・ステイサム、スティーブン・セガール、ジャン=クロード・ヴァンダム、ドルフ・ラングレン、ウェズリー・スナイプス、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノとハリウッド版東映とも言える男・男・男。しかも製作体制は往年の東映と同じくベルトコンベヤー方式。2009年には年間12本も製作・公開したんですよ。まさにハリウッドの東映。
 電話したら “Hi! THIS IS MILLENIUM FILMS.MOVIE COMPANY FOR MEN!”って応対しそうです。

 ミレニアム・フィルムズと往年の東映には他にも共通点があります。それは真面目な批評家からまともに相手にして貰えないもの。そもそも批評家というものはアクションやサスペンスには冷たいのです。しかもミレニアム・フィルムズにしろ東映にしろ、そんなジャンルの映画をただ作っているだけじゃなく量産している訳ですから、批評家にしてみれば印象最悪。映画という芸術形態を浪費している!って訳です。
 批評家の言い分も判りますよ、ミレニアム・フィルムズのアクション映画も東映のやくざ映画も観てしばらくすると記憶がごっちゃになって「どれがどれだったっけ?」ってなりますもの。まさに“見捨ての消耗品”映画です。

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 でもそんな映画の中にも時として、すごい映画が生まれたりします。東映なら、北野武の「アウトレイジ」シリーズ(2010年、2012年)に多大な影響を与えた深作欣二監督の「仁義なき戦い」5部作(1973~74年)や、三島由紀夫が絶賛した「博打打ち 総長賭博」(1968年)なんて傑作がそうです。ミレニアム・フィルムズにはまだそんな作品は生まれていませんが、「世の男性が俺たちの映画で浮世の憂さを忘れてくれたらそれでいいんだ!」って、総帥アヴィ・ラーナーを筆頭に出演スターら関係者は言うと思うんですよ。

★消耗品映画は祭り映画!
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 そんなミレニアム・フィルムズの姿勢を満天下に示したのが、「エクスペンダブルズ」(2010年)。直訳すると、ずばり“消耗品”。スタローンを筆頭に“見捨ての消耗品”アクションに出演してきたスターをずらりと揃え、爆発、銃撃、友情という純度100%の男の世界を全編で展開させ、全世界で大ヒット!
 なんとこの映画でスタローンは5つの年代で主演&脚本を務めた映画がアメリカ興業成績で1位を獲得した史上初めてのスターになったのです。批評家が何と言おうと、映画ファンの多くは“見捨ての消耗品”映画を愛しているのです。

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 その勢いに乗って、待望の続編「エクスペンダブルズ2」がいよいよ3月2日にリリースされます。正直ストーリーなんてあってないようなものですが、前作以上のアクションが全編に展開。消耗品スターたちが暴れているだけの映画です。でもそれがいいのです。公開当時、脳みそまで筋肉と揶揄されたものの今なお熱い支持を集めるシュワルツェネッガーの「コマンドー」(1985年)やスタローンの「ランボー/怒りの脱出」(1985年)のノリが21世紀に蘇えるんですから。しかも「その男ヴァン・ダム」で自虐ネタをするまで堕ちたジャン=クロード・ヴァンダムが久々にナルシスティックな演技を披露し、また伝説の“消耗品”スター、チャック・ノリスが「ありえねぇ~」って感じで登場するのです。

 もうねぇ、“見捨ての消耗品”映画で育った人間には盆と正月が一度に来たような“祭り映画”です。この楽しさ、この可笑しさが判らない人はこう言ってやりましょう。
「見捨て上等! 消耗品結構!」
 
それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年3月号)

2013/03/01(金) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第68回「海猿」&「エアポート」シリーズ

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画と映画を繋げていきます。

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★「俺にかまわず言ってくれ~!」と「君に言っておきたいことがある…」
 「海猿」シリーズ最終作「BRAVE HEARTS」がリリースされましたね。ご覧になった方は「これが最後」って言われてもピンと来ないかもしれません。だっていくらでも続きが作れそうな終わり方なのですもの。でもこれで終わりです。何でも製作のフジテレビが原作者の佐藤秀峰を怒らせてしまって、続編の製作はまかりならんって言われたんですって。シリーズのファンは残念無念な事態です。

 ところで私は、「海猿」って、“観客の涙を無駄に流させる映画”だと思っているんです。大体、「海猿」シリーズみたいなアクション系の映画の“泣き”の定番展開には二つありますよね。
 一つは自らの命を投げ出して誰かを助けるって展開。俗に言う「俺にかまわず行ってくれ~!」ってヤツ。日本人はこれが大好きですよね~。
 もう一つは自らの死を覚悟して、最後に愛する人に気持ちを伝えるって展開。登場人物がこのどちらかの行動を取った時点で、俗に言う“死亡フラグ”が立った状態になります。そうなると観客に哀しみの感情が刺激され、それは涙腺に伝わって感動の涙が流れることになります。例えば「アルマゲドン」(1997年)なんかクライマックスでこの二つを合体させた展開を用意して、観客の涙腺にそれこそアルマゲドン級の攻撃を行っていました。
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★返して、私の涙を返して!
 で、「海猿」シリーズなんですが映画第2作「LIMIT OF LOVE」(2006年)では主演の伊藤英明が後者の行動を見せます。主人公が死亡確定の行動を取った訳ですから、観客の多くは結果が判る前に自動的に涙腺に頬を濡らす指令を出してしまいました。実際、劇場では鼻をすする音がサラウンド状態です。実は私の家内もそのサラウンド音声の一員で、横でズルズルと鼻をすすっていました。しかし映画が終わった時に彼女は言いました。
「返して、私の涙を返して」
なぜ、彼女がこう言ったかは、観ていない人でも判るでしょう? だってシリーズが続いているんだから。
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 今回リリースされた「BRAVE HEARTS」でも“泣き”の定番展開が用意されていましたね。さすがに劇場では観客の多くも学習したのか、「LIMIT OF LOVE」ほど涙のサラウンドにはなっていませんでしたけど、私の横の女性は鼻をグシュングシュン。その音を聞きながら、思ったものです。
「キミのその心の汗は無駄に流されているよ」
 ちなみに「LIMIT OF LOVE」がアメリカはニューヨークで公開された時、くだんの“泣き”の定番シーンでは爆笑が起こったそうです。曰く、
「あの危機的状況で、長々プロポーズをするなんてありえない!」

★まじめ?ふまじめ?「エアポート」最終作
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 アメリカの観客は真面目なパニック映画「LIMIT OF LOVE」をパロディ映画だと思ったようです。実は同じようなパニック映画で、作り手は真面目に作ったのに、観客は大爆笑という“予期せぬ”パロディ映画になった作品があるんです。その映画のタイトルは、「エアポート80」(1979年)。
 これは1970年代、「大空港」(1970年)を第1作として、ハリウッド・メジャー映画会社ユニバーサルが製作した航空パニックシリーズ「エアポート」シリーズの第4作にして、最終作です。このシリーズの基本はハリウッドの中年大スターを主演に据え、相手役に若手女優を用意し、脇にはテレビで顔の知れた性格俳優と半分引退状態の往年のスターを配し、大掛かりな航空事故を描くってものでした。日本でも大人気で、「エアポート75」(1974年)と「エアポート77」(1977年)はその年の興収ベスト10に入るヒット作でした。
 そして「エアポート80」(1979年)。武器商人が、不正取引を知った女性が乗る超音速旅客機コンコルドを撃墜しようとあの手この手の攻撃を繰り返すという物語です。費用対効果を考えるとかなり無理のある計画ですが、スケールは抜群でしょう。
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★さらば、エアポート!
 コンコルドはフランスの飛行機だから乗務員はフランス人でなければなりません。でもアメリカ人はフランスの俳優なんてほとんど知らないのです。そうなるとアメリカのスターにフランス人を演じさせるのが順当。しかしプロデューサーはそうしませんでした。アメリカ人は知らないフランスのスターを二人、起用したのです。
 一人はアラン・ドロン。もう一人は「エマニエル夫人」(1973年)ことシルビア・クリステル。思うにこのキャスティングは「エアポート」人気の高い上に、フランス映画も好まれている日本のマーケットを見込んだものだったのでしょう。実際、当時、日本でドロンとクリステルを知らない人はいなかったのですから。

 しかしその目論見通りにはいきませんでした。まず最初に公開されたアメリカでは観たこともない主演スター、ドロンの気取った演技と乗客を乗せたまま宙返りをして戦闘機の攻撃を避けるコンコルドの「ありえねぇ~!」展開に失笑を通り越して大爆笑。かくてユニバーサルは公開1週間後から本作を“コメディ”として宣伝し直したそうです。
 日本では同じ年の末に公開されましたが、ユニバーサルは知りませんでした。その頃の日本ではドロンもクリステルも集客能力がまったくなかったということを…。かくてエアポート・シリーズは本作で終了となりました。

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 そんな哀れな「エアポート80」ですが、今では友達なんかと一緒に観ながら、突っ込みを入れて楽しむ“映画パーティ”には最適の一本として評価されています。ちなみに「エアポート75」「エアポート77」もいいですよ。“75”はハリウッド大作史上主演女優が最も醜い映画ですし、“77”の海難事故は「海猿 BRAVE HEARTS」とそっくりです。「海猿」も終わることですから、是非、ご覧になってください。

 それでは、また来月!

映画相談人・小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年2月号)

2013/02/02(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第67回「プロメテウス」「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

★人類を進化させたのは異星人?
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 1960年代初頭、カリフォルニアのジョージ・ハント・ウィリアムスンという博士がとんでもない説を言い出しました。
それは「太古の昔、異星人が地球にやってきて、サルを改良して人間を創造した。その証拠は世界各地に残る巨大遺跡や語り継がれている神話の中に隠されている」というものでした。

 この説は世界中のSF関係者に多大な影響を与えました。その一人に作家・アーサー・C・クラークがいます。彼は月で見つかった人工物に端を発する異星人とのファースト・コンタクトを描いた『前哨』という小説を発表します。やがてこの物語から映画史に残る大傑作が生まれます。それはスタンリー・キューブリック監督による「2001年宇宙の旅」(1968年)です。もっとも頭の切れるキューブリックはウィリアムスンの説を判り易く描いたら、ただのホラ話としてインテリからバカにされると思ったのでしょう。“異星人が人類の進化に関与した”という物語の本質を具体的に描きませんでした。結果、今もなお「2001年宇宙の旅」は“難解”で敷居の高い作品と言われ続けています。
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 この高尚な「2001年宇宙の旅」の登場で“異星人古代地球来訪説”はより注目を集めました。そんな時に、スイスの旅行家で考古学者のエーリッヒ・フォン・デニケンが『神々の戦車?』(邦題『未来の記憶』)を出版。これは例えば、アスカの地上絵は宇宙船の滑走路だったとか、ピラミッドやモアイ像は異星人が作ったとか、南米の地下迷宮には異星人の資料庫があるとか、日本の遮光器土偶は宇宙服を着た異星人を象ったものだとか、夢広がる内容で読者の心を鷲掴みにし、1970年代前半に世界的ベストセラーになりました。デニケンは一躍、時の人になり、特に日本では数多くのコミック、アニメに多大な影響を与え、多くの追随者と追随書を生んだのです。

 しかしその後、考古学者からデニケンの論理の展開の飛躍を指摘されたり、ジャーナリストがデニケンの現地調査のウソが暴かれたりして、“異星人古代地球来訪説”はキューブリックが恐れた通りバカにされるようになったのです。
 そんな忘れられた“珍説”を21世紀の今日、スクリーンに蘇らせた男がいます。その男の名はリドリー・スコット。そうです。1月9日にリリースされる彼の最新作「プロメテウス」“異星人古代地球来訪説”(2012年)は、懐かしのデニケン説に全面的に依拠した映画なのです。

★デニケン映画から、唖然呆然の大転調
 「プロメテウス」は荒涼とした大地で行われる異星人の儀式から始まります。劇中では説明がないので、多くの人は「何のこと?」ってなるでしょう。ネタバレ覚悟で説明しますと、このシーンの舞台は太古の地球。そこに異星人がやってきて、海に自らのDNAを拡散させた訳です。生命は海から生まれたのはご存じの通り。つまりこのシーンでリドリー・スコットが描いたのは、人類というか、地球の生命は異星人のDNAから誕生したものってことです。

 その後、物語は世界各地の古代壁画に共通して記されている星図が導く未知の惑星での驚異の冒険が展開します。その惑星にはモアイ像を思わせる石像なんかあったりして、デニケン色がどんどん強くなってきます。ノリは判りやすい「2001年宇宙の旅」って感じです。
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 ところが科学者チームがある洞窟に入ったところで物語は一転します。その洞窟には無数の卵が並んでいるんです。その形状はある映画に出てきた凶悪宇宙生物の卵とそっくり。その映画とは1979年に公開され、リドリー・スコット監督の大出世作となった「エイリアン」です。そうなんです。「プロメテウス」「エイリアン」の数十年前の出来事を描く前日談なんですよ。つまり本作は人類の起源解明なんて大風呂敷を広げておいて、本当はエイリアンの起源を明かす方をメインにしている映画なのです。

 劇場公開の時は、映画会社がなぜか「エイリアン」との関連性を正式に公表しなかったので(なんでも緘口令を敷いたんですって)、多くの観客は心の準備が出来ず、終盤の展開に唖然呆然とする人続出だったそうです。中には「「エイリアン」のマネやんけ!」と批判した人もいたとか。でもそれは筋違い。スコット監督は最初から本作を「エイリアン」前日談シリーズの第一部として製作したんです。ですからDVDやブルーレイで本作を観る時は、そのつもりでお楽しみください。ちなみに続編は2014年公開予定です。

★前日談がもう一本!
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 ところで「エイリアン」と人気を二分するSFホラー映画に「遊星からの物体X」(1982年)があります。こちらに登場するのは太古の昔にから南極の氷の底に眠っていた、生き物を同化する不定的の生命体。
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 「エイリアン」と違って、劇場公開時にはヒットしなかったものの、ビデオで評価を高め、続編となるTVゲームまで作られるほどの人気を得るに至りました。そして「エイリアン」と同様、前日談が製作されたのです。「プロメテウス」と同日リリースになる「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」がそれです。オリジナルで少し描かれたノルウェーの南極観測隊全滅の模様が描かれます。

 オリジナルは男ばかりのむさい映画でしたが、今回は主人公を女性にして、ちょっぴり華のある味わいにしています。しかしやはり、注目はどんな風に物語を前作に繋げるかってこと。オリジナルのファンは物語が進みにつれ「大丈夫か?」と心配になってくること確実です。この変なサスペンスが本作の肝でしょう。どう繋がるかは観てのお楽しみですが、あっと驚く展開が用意されています。
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 実は「エイリアン」の脚本を書いたダン・オバノンとオリジナルの「物体X」を監督したジョン・カーペンターはUSCの映画学科の同級生で、「ダークスター」(1974年)というSF映画を一緒に作った仲なんです。この「ダークスター」は、機会があったら、是非、観てくださいね。「ヘェ~」ってなりますから。

 それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2013年1月号)

2013/01/03(木) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

“映画の星座盤”第66回「007」シリーズ

一本の作品から広がる映画の世界…。
気がつくと、それは星座の輝き。
映画検定一級の映画相談人が、
星と星を繋げるように、映画映画を繋げていきます。

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★これがボンドマニアだ!
 私は毎日、12月1日を一日千秋の想いで待っています。だって、だっていよいよ公開なんですよ、「007」の最新作「スカイフォール」が!

 何を隠しましょう。私は「007」ジェームズ・ボンドの大ファンなんです。最初に観たのはシリーズ第4作「サンダーボール作戦」(1965年)。TBSの月曜ロードショー、1977年4月4日のことでしたね。翌週にはシリーズ第1作「ドクターノオ」(1962年)が放映されて、もうこれで「007」に魅せられまして、大人になったら、ショーン・コネリーのようなカッコ良い男になるんだって心に決めたものです。で、その年の暮れ、シリーズ第10作「私を愛したスパイ」が公開される頃には、中坊の分際で背伸びして、イアン・フレミングの原作シリーズを完全読破。親を拝み倒してサントラを買って貰って、それまでのシリーズ主題歌を全部マスター。かなりなボンドマニアになっていました。

 以来35年間、残念ながらコネリーのようなゴージャスな男になれなかったけど、「007」への愛は尽きることがありません。シリーズは一作を除き、最低5回は観直していますし(お気に入りのシーンだけを楽しむチョイ見はもっとね)、映像ソフトやCDはバージョンが変わるたびに買い替えるし、ミニカーなんかのキャラクター・グッズもかなり揃えましたね。家庭を持ってからはだいぶ控え目になりましたけど、それでも「007」には結構な額を“お布施”しています。こういう“お布施”を勿体ないと思われる方もいるでしょう。でも私にとってはこれが「007」への“愛の証”なんです。この気持ち、何かのファンになっている方なら判ってくれるでしょ?

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★残念作で判る「007」50年の秘密
 「007」ジェームズ・ボンドがスクリーンに登場したのは、1962年10月5日(日本は1963年6月8日)。それから半世紀、正編22本、番外編2本計24本が作られてきました。毎回、大掛かりなアクションと奇想天外な秘密兵器、ゴージャスな美女と魅力的なロケで世界中のファンを楽しませています。そう、スパイの代名詞と言えば「007」なのです。

 そんなボンド・シリーズですが、数本に一本、ファンを心底から失望させる作品が作られます。初代「007」ショーン・コネリーの再登板作であるシリーズ第7作「ダイヤモンドは永遠に」(1972年)、三代目ロジャー・ムーアのシリーズ第9作「黄金銃を持つ男」(1974年)とシリーズ第14作「美しき獲物たち」(1985年)、四代目ティモシー・ダルトンのシリーズ第16作「消されたライセンス」、五代目ピアース・ブロスナンのシリーズ第20作「ダイ・アナザー・デイ」、そして六代目ダニエル・クレイグのシリーズ第22作「慰めの報酬」(2008年)がそれです。

 もっとも年月が経つと、ファンの間に“許し”の感情が生まれてきて、「まっ、あれはあれでいいじゃない」って評価に変わることがあります。日本で撮影された「007は二度死ぬ」(1967年)、二代目ジョージ・レーゼンビーのシリーズ第6作「女王陛下の007」(1969年)、シリーズ第11作「ムーンレイカー」(1979年)とかは、その部類です。

 どうして、こんな失望作が出来るかと云うと、製作チームがその時代のトレンドを「007」に取り込むからなのです。トレンドを具体的に言うと他のヒット作の要素のことです。例えば「黄金銃を持つ男」はブルース・リーに代表されるカンフー映画「ムーンレイカー」はパロディ映画&SF特撮映画、「消されたライセンス」「リーサル・ウェポン」(1987年)など対犯罪組織アクション、「ダイ・アナザー・デイ」はマイケル・ベイ作品、「慰めの報酬」は「007」と同じイニシャルのジェイソン・ボーン・シリーズといった具合です。

 ボンドマニアにとって、「007」はワン&オンリーなものという想いが強いので、他の映画に影響を受けるのが我慢ならないのです。とは言え、製作チームが伝統に胡坐をかかず、あえて模倣を行ってきたからこそ、「007」の冒険が50年も続いたと言えるでしょうね。

 但し、私は「慰めの報酬」だけは今後もきっと再評価されないと思っています。前作「カジノ・ロワイヤル」(2006年)の出来が良すぎたので、評価のハードルが高くなったってのもあるのですが、ボンドガールがただの知り合いで終わるってのはないでしょうよ、ねえ?

★“「007」地獄旅”のお誘い
 今から20年ほど前、「007シリーズなんて馬鹿馬鹿しい」って言う友人を、「全作観ても同じことが言えるかな」と挑発したことがあります。それに乗った友人は、“「007」地獄旅”と自ら名付けた全作制覇に挑みました。結果、彼は新作が公開される度、劇場に飛んでいく熱心なボンドマニアになったのです。彼曰く、「007の楽しさが判らなかったのは一生の不覚。人生の楽しさを一つ、失っていたようなものだ。それにしても「慰めの報酬」はヒドイ」。

 そこで皆さんにお薦めします、“「007」地獄旅”を。おどろおどろしい名前ですが、実際は“天国旅”ですよ。実は私の妻も、“地獄旅”の経験者。友人同様、「慰めの報酬」が嫌いで、私同様「スカイフォール」に大期待を寄せています(ちなみに友人も妻もシリーズは2周しています)。

 “地獄旅”のやり方はいたって簡単。シリーズの製作順にただ観ていくだけ。無茶苦茶面白い作品からどうしようってなる作品まで様々ですが、いまだかつてないワクワクする映画体験が出来ることは確実です。どうですか? ボンドマニアになってみませんか?

 とは言え、中には面白いヤツだけ観たいなんて人もいるでしょうね? そんな人のためにオススメ作を挙げておきましょう。
 コネリー/007なら「ロシアより愛をこめて」(1963年)と「ゴールドフィンガー」(1964年)。ムーア/007なら「私を愛したスパイ」「ユア・アイズ・オンリー」(1981年)、ダルトン/007なら「リビング・デイライツ」(1987年)、ブロスナン/007なら「トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997年)、そしてクレイグ/007第一作でシリーズ五指に入る傑作「カジノ・ロワイヤル」
 いやぁ、「007」って本当に、面白いですよ~!
 
 それでは、また来月!

映画相談人小玉大輔(「シネマ倶楽部」2012年12月号)

2012/12/01(土) | 映画の星座盤 | トラックバック(0) | コメント(-)

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